food&wine/料理とお酒
Vranac(ヴラナッツ)《中央ヨーロッパの土着品種》
旧ユーゴスラヴィアのモンテネグロ地域原産。セルビアでは主にコソヴォで生産されている。名前は「暗い馬」という意味。果実は大きく、色が濃く、紫または濃い青の薄い皮を持つ。手摘みによる収穫は9月中旬から始まり、地域によっては10月まで続く。
若いワインは明るい紫色の色調と、赤いベリーとフルーツの香りを持つ。1〜2年の熟成後濃いルビー色になり、シナモン、チョコレート、甘草、花、黒い果実、ハーブ、ほのかな森林香など、より複雑な香りを発する。味わいは繊細で丸みがあり、長く滑らかな仕上がりが生まれる。高品質で辛口の赤ワインの生産に使用され、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどとの相性もよい。しっかりとしたタンニンと酸味は、オーク樽とボトルの熟成に適している。
【主な栽培地】
クニャジェヴァッツ地方、ニシャヴァ川流域地方、ヴラニェ地方、トリモラヴェ地方、ベオグラード地方、シュマディヤ地方、スレム地方、コソヴォ地域
Začinak(ザチナック)《セルビアの土着品種》
【別名】
=クラインスク・ツルノ(Krajinsko Crno)=ネゴティンスコ・ツルノ(Negotisko Crno)=ザチナック(Zachinak)=ザチニャック(Zacinjak)=ザジナック(Zazinak)=ザデンチャイ(Zdencaj)
中央地域の東部、南部で多く生産されている。ワインは濃い紫色で 、さくらんぼ、ザクロ、ブルーベリーなどの果実やミントのフレッシュで強い香りを持ち、強いタンニンと酸のバランスがよい。色鮮やか特徴を生かし、ブレンドに使用されることが多い。
【主な産地】
ネゴティン渓谷
ポツェリナ・ヴァリェヴォ地方(POCERSKO-VALJEVSKI REJON)
ポツェリナ・ヴァリェヴォ(Pocerina–Valjevo)地方はベオグラードの南西にあり、ワイン産地は、サヴァ(Sava)川の南とドリナ(Drina)川の東の地域をカバーしている。この地域は、セル(Cer)山とヴラシッチ(Vlašić)山の斜面に広がり、全体がタムナヴァ(Tamnava)川、ウブ(Ub)川、コルバラ(Kolubara)川、リーグ(Ljig)川、ヤダー(Jadar)川と交差している。気候に影響を与える要因は、南側の地域を取り囲む低山スボボール(Suvobor)山とマルイェン(Maljen)および北西側のセル(Cer)山である。地形は南西から北東に向かって徐々に低下しており、ブドウ園は標高150mから310mの主に南部、南東部、東部に位置している。セル山の斜面には、北と北東の斜面にもブドウ園が存在する。最大の産地はポドゴリエ(Podgorje)である。
1.ポツェリナ(Pocerina)地区
2.ポドゴリエ(Podgorje)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)モラヴァ、トラミナック、ソーヴィニョン、シャルドネ(黒ブドウ)ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、プロクパッツ
【原産地呼称】
ヴィルニチの水(Voda Vrnjci)/シロゴイノ(Sirogojno)
ネゴティン渓谷地方(REJON NEGOTINSKA KRAJINA)
ネゴティンのワイン作り(Negotinske Pivnice)は、ユネスコ(UNESCO)に登録された、セルビアの世界文化遺産のひとつである(2010/4/15)。ネゴティン・クラィナ(Negotinska-krajina)地方のネゴティン渓谷は、かつてバルカン山脈と呼ばれたスタラ・プラニナ山のふもとに位置し、一方はミロシュ・ツルニ・ヴラ(Miroč, Crni Vrh)、デリ・ヨヴァン(Deli Jovan)の山々と、反対側のドナウ川(Dunav)とティモック川(Timok)に囲まれた平地に位置している。年間を通して晴れた日が多いため、この地域は晩生品種に特に適している。なかでもセルビア国内でのカベルネ・ソーヴィニヨンの品種の最高の特性を表現する理想地域であると考えられている。また、稀少なタミヤニカ品種の黒ブドウ(Crna Tamjanika)も、この地方でのみ栽培されている。19世紀にはオーストリア・ハンガリーの領事館が置かれ、ブドウの樹の取引記録も残されている。
この地方のラヤツ(Rajac)、ログリイェヴォ(Rogljevo)、スメドヴァッツ(Smedovac)にある「ピムニツェ(pimnice)」には「人々が住むのではなくワインが住んでいる」。「ラヤチケ・ピムニツェ(Rajačke pimnice)」は、18世紀の木造建築である。田舎の広大なブドウ畑の地下にセラーを作ることができなかったため、農民が切り出した石や丸太で建設した。17世紀から19世紀の建物は狭い通りに並び、貯蔵室は地下3フィートにある。地上階では、生産者が収穫と醸造の時期に生活をした。ラヤツ村近郊のティモック川の丘にあり、かつて300軒あったピムニツェのうち30軒ほどが観光名所となっている。ログリイェヴォ村にある約150軒のピムニツェは、中央の高原に続く曲がりくねった通りに並び、屋根付きの井戸が村の中心となっている。スメドヴァッツの石造りのピムニツェ(Štubičke pimnice)は、かつて400軒あったピムニツェのうち、39軒が保存されている。この地域の最大のワイン生産地域はネゴティン渓谷(Negotin)地区である。
4.クリュチ(Ključ)地区
5.ブルザ・パランカ(Brza Palanka)地区
6.ミハイロヴァツ(Mihajlovac)地区
7.ネゴティン渓谷(Negotin)地区
8.ログリィエヴォ・ラヤツ(Rogljevo-Rajac)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)スメデレヴカ、タミヤニカ、リースリング・イタリコ、ソーヴィニョン、セミヨン、シャルドネ、リースリング/(黒ブドウ)プロクパッツ、ザチナック、ヴラナッツ、ツルナ・タミヤニカ、バグリーナ、ピノ・ノワール、ガメイ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ムスカット・ハンブルク
【原産地呼称】
クリビヴィル(Krivi Vir)の羊/牛/山羊乳のハードチーズ(Krivovirski kačkavalj)/ホモリェの羊の塩水漬チーズ(Homoljski ovčiji sir)/ホモリェの山羊の塩水漬チーズ(Homoljski kozji sir)/ホモリェの牛の塩水漬チーズ(Homoljski kravlji sir)/スタラ・プラニナのチーズ(Staroplaninski kačkavalj)/ホモリェの蜂蜜(Homoljski med)/クラドヴォのキャビア(Kladovski kavijar ”Caviar of Kladovo”)/ドゥボカのミネラルウォーター(Mineralna voda Duboka)/ヴァリエヴォのタバコ(Valjevski duvan čvarci)/
【郷土料理】
ムラヴァ川流域地方(MLAVSKI REJON)
ムラヴァ川流域(Mlava)地方の生産地は大モラヴァ川(Velika Morava)下流の右岸に位置する畑と、ムラヴァ川(Mlava)とペック川(Pek)の盆地に広がっている。最大のワイン生産地域はポジャレヴァツ(Požarevac)である。
13.ブラニチェヴォ(Braničevo)地区
14.ポジャレヴァツ(Požarevac)地区
15.レサヴァ川流域(Resava)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)ソーヴィニョン、ピノ・グリ、トラミナック/(黒ブドウ)ピノ・ノワール、マルセラン、プロクパッツ、カベルネ・ソーヴィニョン
【原産地呼称】
ポジャレヴァツのソーセージ(Požarevačka kobasica)
ニーシュ地方(NIŠKI REJON)
ニーシュ(Niš)地方の生産地は、ニシャヴァ川(Nišava)の下流域と南モラヴァ川(Južna Morava)とモラビカ川(Moravica)の下流域に位置している。最大の生産地はツェガール(Cegar)である。
19.ソコバーニャ(Sokobanja)地区
20.アレクシナッツ(Aleksinac)地区
21.ジツコヴァッツ(Zitkovac)地区
22.ツェガール(Cegar)地区
23.クティーナ(Kutina)地区
24.スヴルリグ(Svrljg)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)ジュプリャンカ、イタリアンリースリング、ソーヴィニョン・ブラン/(黒ブドウ)メルロー、プロクパッツ、カベルネ・ソーヴィニョン、プロヴディーナ
【原産地呼称】
スヴルリグの羊乳チーズのコーンブレッド「ベルムジュ」(Svrljiški belmuž)/スヴルリグの牛乳の白い塩水漬チーズ(Svrljiški kačkavalj)/スヴルリグの牛乳のハードチーズ(Svrljiški kravlji sir)/オブラチナのサクランボ(Oblačinka iz Oblačine)
【郷土料理】
ニシャヴァ川流域地方(NIŠAVSKI REJON)
ニシャヴァ川流域(Nišava)地方の生産地は、ニシャヴァ(Nišava)川中流域の狭い谷にある。最大のワイン生産地域はピロット(Pirot)である。
25.ベラ・パランカ(Bela Palanka)地区
26.ピロット(Pirot)地区
27.バブシニツァ(Babušnica)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)シャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン、イタリアンリースリング、スメデレヴカ/(黒ブドウ)ヴラナッツ、プロクパッツ、ムスカット・ハンブルグ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン
【原産地呼称】
ピロットの絨毯(Pirotski ćilim)/ピロットの牛乳のハードチーズ(Pirotski kačkavalj od kravljeg mleka)
【郷土料理】
ヤマドリタケ/仔羊の丸焼き/ベーラ・バランカのバニツァ(パイ)
レスコヴァツ地方(LESKOVAČKI REJON)
レスコヴァツ(Leskovac)地方の生産地域は、南モラヴァ川(Južna Morava)の上流域の非常に広くギザギザした斜面と、プスタ・レカ川(Pusta Reka)、ヴェテルニカ川(Veternica)、ヴラシナ川(Vlasina)支流の、レスコヴァツ全体に分布している。最大のワイン生産地域はヴィナラ(Vinara)である。
28.バビチコ(Babičko)地区
29.プスタ川流域(Pusta)地区
30.ヴィナラ(Vinara)地区
31.ヴラソティンツェ(Vlasotince)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)ライン・リースリング、シャルドネ、イタリアンリースリング/(黒ブドウ)メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、ブラウ・フランキッシュ、プロクパッツ
【原産地呼称】
レスコヴァツのバーベキュー肉(Leskovačko roštilj meso za pljeskavice i ćevapčiće)/レスコヴァツの自家製アイヴァル(Leskovački domaći ajvar)
【郷土料理】
ピェスカヴィツア(Pljeskavice)/チェヴァプチッチ(ćevapčiće)/串刺し肉(Ražnjići)/ムチュカリッツァ(Mućkalica)
ヴラニェ地方(VRANJSKI REJON)
ヴラニェ(Vranje)地方の生産地は、南モラヴァ川(Južna Morava)を囲むヴラニェ渓谷の地形が含まれている。最大のワイン生産地域はヴルトゴシュ(Vrtogoš)のワイン生産地域である。
32.スルドゥリツェ(Surdulice)地区
33.ヴルトゴシュ(Vrtogoš)地区
34.ブストラニェ(Buštranje)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)シャルドネ、ムスカット・オトネル、ソーヴィニョン・ブラン、タミヤニカ/(黒ブドウ)カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、プロヴディーナ、ムスカット・ハンブルグ、ヴラナッツ
チャチャク・クラリェヴォ地方(ČAČANSKO – KRALJEVAČKI)
チャチャク・クラリェヴォ(Čačak–Kraljevo)地方のワイン生産地は、西モラヴァ川(Zapadna Morava)の両岸に位置するチャチャク渓谷(Čačak)と、イバール川(Ibar)の渓谷の小さな地域がある。オブチャル山とカブラル山の渓谷には、オブチャル・カブラル修道院郡があり、オスマン帝国支配の時代を通してワイン製造の伝統が守られてきた。最大のワイン生産地域は、イェリカ(Jelica)である。
35.リュビッチ(Ljubić)地区
36.イェリカ(Jelica)地区
37.イバール川流域(Ibar)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)シャルドネ/(黒ブドウ)カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ムスカット・ハンブルグ、プロクパッツ
【原産地呼称】
ウジツェの牛の生ハム(Goveđa užička pršuta)/ウジツェの豚の生ハム(Svinjska užička pršuta)/ウジツェのベーコン(Užička slanina)/ズラタルの牛乳の白い塩水漬チーズ(Zlatarski sir)/アリリェのラズベリー(Ariljska malina)/シェニツァの羊(Sjenička jagnjetina)/シェニツァの羊乳の白い塩水漬チーズ(Sjenički ovčiji sir)/シェニツァの牛乳の白い塩水漬チーズ(Sjenički kravlji sir)/カチェルの蜂蜜(Kačerski med)/チゴタ(Čigota)
【郷土料理】
カイマック(Kajmak)/参列者のキャベツ(Svadbarski kupus)/パスリ(Pasulj)/グラーシュ(Gulaš)/ブルーベリー/茸 カラカサタケ(Macrolepiona proceral)、アンズタケ(Cantharellus cibarius)、チチタケ(Lactarius delicious)、ヤナドリタケ(Boleus edulis)、ホコリタケ(Langemania gigantea)、アイカワタケ(Laetiponus sulphureus)
トリモラヴェ地方(REJON TRI MORAVE)
トリモラヴェ(Tri Morave)地方は大モラヴァ川(Velika Morava)、西モラヴァ川(Zapadna Morava)、南モラヴァ川(Južna Morava)の3河川で構成されており、最も有名な産地は、山々の狭間にある西モラヴァ川流域地方にある。西と北側に山に接しており、それらは、グレデイチケ山(Gledićke)、ベシュニャヤ山(Bešnjaja)と、ゴシュ山(Goč)の南側、コパオニク山(Kopaonik)、ヤストレバッツ山(Jastrebac)と東ベャリャニカ山(Beljanica)、クチャイスケ山(Kučajske)、ルタニ山(Rtanj)とオズレン山(Ozren)である。
ジュパ(Župa)では、多くのブドウ畑が南または南東向き斜面にある丘陵地帯でブドウを栽培している。ジュパとそのブドウ園に関する最初の記録は12世紀のものである。中世のセルビア建国者であるステファン・ネマニャ(StefanNemanja)は、ジュパのいくつかの村とそのワインセラーをストゥデニツァ修道院に寄贈した。これらの村はすべて、必要に応じて修道院にワインを供給する義務を負っていた(ストゥデニツァ憲章(dd.1196)に記載)。また、ネマニッチ王朝断絶後もラザール公(Lazar)が、自身のワインセラーをクルシェヴィツァ畑(Krševica)に置いていた。フィロキセラは1882年にジュパに到着し、4年のうちに荒廃したが、1891年の国営ブドウ園の設立が耐性株の回復に役立った。
20世紀初頭には100万ℓを超えるワインセラーを所有する醸造家がいくつか存在し、ワインとブドウは、ジュパの主要な収入源であった。しかしながら、20世紀の戦争によりワイン醸造のさらなる発展は停止した。第二次世界大戦後、地元の協同組合は国有化され、法により醸造家が商業目的でワインを生産することが禁じられた。ブドウ栽培は大規模な工業用ワイナリーむけの販売に限られ、醸造家にとって困難な時代であった。
21世紀初頭、先駆的なグループが、ブドウ園やワインセラーでの努力と努力を活かして、かつての栄光を取り戻すべく登場した。今日ではジュパは、プロクパッツとタミヤニカの栽培で知られている。黒ブドウのプロクパッツを「王」、白ブドウのタミヤニカを「女王」と並び称し、高品質なワインを生産している。この地方の最大のワイン生産地域はクルシェヴァッツ(Kruševac)である。
38.パラチン(Paracin)地区
39.ヤゴディナ(Jagodina)地区
40.ヨヴァッツ(Jovac)地区
41.レヴァッツ(Levac)地区
42.テムニッチ(Temnić)地区
43.トルステニッツ(Trstenic)地区
44.クルシェヴァッツ(Kruševac)地区
45.ジュパ(Župa)地区
46.ラジャニ(Ražanj)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)タミヤニカ、リースリング・イタリコ、ピノ・グリ/(黒ブドウ)プロクパック、ヴラナッツ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー
【原産地呼称】
ルタニのハーブティ(Rtanjski čaj)
ベオグラード地方(BEOGRADSKI REJON)
ベオグラード(Beograd)地方のワイン生産地域は、コルバラ川(Kolubara)とサヴァ川(Kolubara)の河口から、大モラヴァ川(Velika Morava)とドナウ川(Dunav)の合流点までの川の南の裏地と、アヴァラ山(Avala)とコスマイ山(Kosmaj)の斜面の畑に広がっている。良好な気候と穏やかな日当たりの良い川の斜面では、イリュリヤ、トラキア、ケルトの部族は、この地域にローマ人が到着する前からブドウを栽培していた。第一次世界大戦まで、ベオグラードのスメデレヴォ(Smederevo)周辺は、市内中心部自体を含むブドウ園で覆われていたと伝わっている。この地域は歴史的に、上質な白ワインで知られ、ブドウ品種スメデレヴカ(Smederevka)は古くからこの地域で栽培されてきた。品種名としての「スメデレヴカ」は、19世紀に書かれた資料に記載されている。最も重要な畑は、スメデレヴォ近郊のズラトノブルド(Zlatno brdo)「黄金の丘」である。名前は、広大なブドウ園が葉の色を緑から黄金色に変える秋に遠くから見ることができる色に由来し、セルビアで最高のスメデレヴカワインを産出している。
また、第2蜂起のリーダーであるミロシュ・オブレノヴィッチ公(Milos Miloš Obrenović)も19世紀にスメデレヴォにブドウ畑のあるサマーハウスを購入した。36haの畑でブドウの栽培をはじめ、オブレノヴィッチ家の「ロイヤルヴィンヤード」の伝統的なブドウの収穫に参加していた。
47.アヴァラ山およびコスマイ山(Avala-Kosmaj)地区
48.グロツカ(Grocka)地区
49.スメデレヴォ(Smederevo)地区
50.ドゥボナ(Dubona)地区
51.ラザレヴァッツ(Lazarevac)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)スメデレヴカ、ソーヴィニョン・ブラン、セミヨン、トラミナック、シャルドネ、ライン・リースリング、イタリアンリースリング/(黒ブドウ)プロクパッツ、ヴラナッツ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ムスカット・ハンブルグ、ピノ・ノワール、メルロー、カベルネ・フラン、マルセラン、リージェント(Regent)
【原産地呼称】
ヤゴディンのロゼワイン(Jagodinska ružica)/ジェルダップの蜂蜜(Đerdapski med)
シュマディヤ地方(ŠUMADIJSKI REJON)
シュマディヤ(Šumadija)地方の生産地域には、ルドニク山(Rudnik)から大モラヴァ川(Velika Morava)までのシュマディヤ(Šumadija)の丘陵地帯の一部が含まれている。最大のワイン生産地域はクラグェヴァッツ(Kragujevac)である。
カラジョルジェヴィッチ(Karađorđević)王家のワインがこの地域を有名にしたが、この地域のワイン造りはそれよりはるか以前にさかのぼることができる。ヴィンチャ(Vinča)村の名は、オプレナッツ(Oplenac)のローマ人により、ワインを意味するヴィンセア(Vincea)にちなんで名付けられた。
オプレナッツは19世紀にセルビア国家の中心地となったが、同時にワインの首都でもあった。1906年にペータル1世(Peter I Karađorđević)はオプレナッツ農民から土地とブドウ園の買い取りをはじめ、土着品種の栽培をはじめた。後継者であるアレクサンダル(Aleksandar)は、父親からワインとブドウ栽培への愛情を受け継ぎ、1923年から国際品種の栽培をはじめた。1931年にはオプレナッツの丘に彼自身のワインセラーの建設を決め、長さ45m幅15m、地下2階で40万ℓの容量をもつ王家のワインセラーが完成した。ワインは、容量4,000ℓのスラヴォニアオーク樽でここに保管されていた。今日のオプレナッツ・ワイン街道の最大の観光名所である。博物館に変わった一部には、最初のワイン樽のいくつかが大切に保管されている。その中には、1922年にアレクサンダル王への結婚祝いとしてユーゴスラビア王国の国民から贈られた3つの樽も含まれている。それぞれの樽の容積は530ガロンあり、正面にはセルビア語、クロアチア語、スロベニア語で賛美歌の詩が刻まれている。
第二次世界大戦後、ヴィンチャのワイン製造協同組合は国有化され、工業国営企業ナヴィップ(Navip)の一部とされた。王のワイナリーは王家の財産とともに没収され、時間の経過とともにブドウ園は放置されていた。 1990年代まで放置されていたオプレナッツのブドウ畑はワイナリーのアレクサンドロヴィッチとラドヴァノヴィッチによる改修後、約1120haに至っている。最初の収穫は2006年に行われ、以降、王家のブドウ畑のワインが再び世界中へ輸出されている。
52.クルニェヴォ(Krnjevo)地区
53.オプレナッツ(Oplenac)地区
54.ラカ(Raca)地区
55.クラグエヴァッツ(Kuragujevac)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)オプレンカ(Oplenka)、ジラヴカ、ピノ・ブラン、プレメンカ、トラミナック、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、スメデレフカ、ライン・リースリング、セミヨン/(黒ブドウ)プロクパッツ、ガメイ、ピノ・ノワール、ヴラナッツ、ムスカット・ハンブルグ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、マラガ( Malaga)
【原産地呼称】
ブヤノヴァツのミネラルウォーター「AQUA HEBA」(Bujanovačka mineralna voda “AQUA HEBA”)/ブコヴィチュカ・バーニャの「ミロシュ王子」(”Knjaz Miloš” Bukovička banja)
【郷土料理】
プラム料理/コーンブレッド(Proja)/ポガチャ(Pogača)
スレム地方(SREMSKI REJON)
スレム(Srem)地方のワイン生産地域は、ぶどう畑や果樹園に理想的な北向き(ドナウ川)と南向き(サバヴァ川)の肥沃な斜面にあり、国立公園のエリアを囲んでる。フルシュカ・ゴーラ(Fruška Gora)山の頂上を囲む美しい国立公園は、「セルビアの宝石」とも呼ばれている。
ローマ帝国皇帝マルクス・アウレリウス・プロブス(Marcus Aurelius Probus)がこの地方のネシュティン(Neštin)の村の山の斜面に最初のブドウを植えてから約1700年が経過した。15世紀から18世紀に南部からの多くの修道院が北に移動し、ドナウ川とパンノニア平野の肥沃な地域であるシルミアの間の離れた丘に定住した。これらの修道院はブドウの栽培を始め、現在に至るまで蜂蜜やワインが生産されている。
ベルメット(Bermet)という芳醇なデザートワインのハーブの処方は、世代を超えて受け継がれる秘伝である。スレムスキ・カルロヴツィ(Sremski Karlovci)の町とその周辺でのみ生産されており、オーストリア・ハンガリーの宮廷をはじめ、ヨーロッパの上流社会でも愛用されていた。豪華客船タイタニック号のワインリストにも採用されていた。また、乾燥ブドウで作られたデザートワイン、アウスブルク(Ausburch)のレシピは、スレムスキカルロヴィの町がオーストリア・ハンガリー統治下にあったときに、ウィーンの宮廷から地元のトップワイン生産者に受け継がれたものである。
56.フルシュカ・ゴーラ(Fruška Gora)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)シャルドネ、ムスカット・クロカン、フルシュカ・ゴーラ・リースリング、シュプリャンカ、トラミナック、ソーヴィニヨン・ブラン、ネオプランタ、フルミント、セミヨン/(黒ブドウ)ポルトゥギーザー、ヴラナッツ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、プロヴディーナ、シラー、カダルカ、フランコヴカ
【原産地呼称】
「ビセルノ・オストロヴォ」区画のブドウ「ムスカット・クロカン」(Biserno ostrvo, muskat krokan)/デザートワイン「ベルメット(Bermet)」/カルロバッツのリースリング(Karlovački rizling)ワイン 辛口/やや辛口/ソンボルの羊乳のハードチーズ(Somborski sir)/スレムの「クーレン」ソーセージ(Sremski kulen)/スレムの自家製ソーセージ(Sremska domaća kobasica)/スレムのサラミ(Sremska salama)/フルシュカ・ゴーラの菩提樹蜂蜜(Fruškogorski lipov med)/フトグのキャベツとザワークラウト(Futoški sveži i kiseli kupus)
【郷土料理】
ロールキャベツ(Sarma)/ポドヴァラック(Podvarak)/カボチャ/シュトルーデル
スボティツァ地方(SUBOTIČKI REJON)
ハンガリーとの国境沿いのスボティツァ・ホルゴス(Subotica-Horgos)地方は、先史時代のパンノニア海が残した砂地が広がっている。生産地域は、東部と西部のそれぞれ別の地区で構成され、最大の生産地域はパリッツ地区である。フィロキセラの流行がヨーロッパのブドウ畑の多くを破壊した時期に、この地域は被害を免れ、現在も古代の品種が栽培されている。
57.リディツァ(Riđica)地区
58.パリッツ(Palic)地区
59.ホルゴス(Horgos)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)イタリアンリースリング、ライン・リースリング、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、シャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン、スレムスカ・ゼレニカ、バカトール(Bakator)マンゾーニ・ビアンコ(Manzoni Bianco)、メデナッツ・ベリ(Medenac Beli)/(黒ブドウ)カダルカ、ディンカ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ピノ・ノワール、フランコヴカ
【原産地呼称】
ベズダンのダマスク織(Bezdanski damast)
テレチカ地方(REJON TELEČKA)
テレチカ(Telečka)地方のワイン生産地域は、テレチカ・コサ(Telečka Kosa)とテレチカ高原の領域であるバチカ(Bačka)の中心部に位置している。最大のワイン生産地域はサパドナ(Zapadna)地区である。
60.西テレチカ(Western Telečka / Telečka kosa)
61.中央テレチカ(Central Telečka / Bačka Telečka)
62.東テレチカ(Eastern Telečka / Mali Idjos)
【主な栽培品種】
(白ブドウ)ライン・リースリング、イタリアンリースリング、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネ、ディンカ、ネオプランタ、シーラ/(黒ブドウ)ブラウ・フランキッシュ、カダルカ、プロブス、ピノ・ノワール、ガメイ、メルロー
ポティシェ地方(POTISKI REJON)
ポティシェ/ティサ川流域(Tisa / Potisje)地方は、ティサ川東西沿岸地区カンジジャ(Kanjiža)から北に伸び、南のドナウ川の合流点まで達している。最大の生産地域はティサ川北部(Northen Tisa / Potisje-Sever)地区である。
63.ティサ川北部(Northen Tisa / Potisje-Sever)
64.ティサ中央域(Southern Tisa / Potisje)
65.ティサ川南部(Down Tisa / Potisje-Jug)
【主な栽培品種】
(白ブドウ)トラミナック、ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネ、モラヴァ/(黒ブドウ)ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、プロクパッツ
バナト地方(BANATSKI REJON)
ルーマニアとの国境近くのバナト(Banat)地方は、ヴルシャッツ(Vršac)山とバナト(Banat)平原に位置し、この地方での高品質なワインづくりの先駆地である。キキンダ(Kikinda)と中央バナト郡(Banat-Srednji)で構成され、最大のワイン生産地域はキキンダである。稀少な土着品種の白ブドウ、クレアカ(=Banatski Rizling/バナツキ・リースリング)の本拠地である。ハム、パプリカ、コショウ、サクランボなどの詰め物を巻き込んだ、モクリン村のロールチーズ(Mokrinski Sir)も有名。
66.キキンダ(Kikinda)
67.中央バナト(Central Banat)
【栽培品種】
(白)クレアカ、スメデレヴカ、ジュプリャンカ、ムスカット・オトネル、リースリング・イタリコ、シャルドネ、ピノ・ブラン/(黒)フェアテスカ・ネグラ
【原産地呼称】
バナツキ・リースリングの白ワイン(Banatski rizling)/エシャニの鯉(Ečanski Šaran)/ヴルビカのニンニク(Vrbički beli luk)
ユジュニバナト地方(JUŽNOBANATSKI REJON)
ユジェニバナト(Južni Banat)地方は、南バナト郡(Južni Banat)南東部のヴルシャツ山西側斜面、およびデリブラツカ・ペスツァラ(Deliblatska peščara)地区にある。最大のワイン生産地域はヴルシャツである。
ヴルシャツ(Vršac)のワイン醸造が古代にさかのぼるとことができる。バナトの穏やかな平野とヴルシャツ山脈の90〜250mの高度と穏やかな大陸性気候が、この地域のワインの本格的で洗練された味をもたらしている。ワイン醸造に理想的な条件が得られ、高品質の白ワインが生産されている。
この地域のワインに関する最初の記録は、1494年に経済学者ブディマ(Budima)が、ハンガリー王ラディスラウス(Ladislaus)のために10.5金フォリント(forints)でヴルシャツワインの樽を購入したという裁判所の記録である。19世紀にはヴルシャツのブドウ畑はハンガリー王国で最大であり、ヨーロッパでも最大級の10,000haに広がっていた。1804年以来、ヴルシャツ市の紋章にはブドウが用いられている。1875年には記録的な収穫が行われ、5600万ℓのワインが生産された。農業は完全にワイン造りに集中していたので、ヴルシャツの人々は生活を維持するために小麦を輸入しなければならないほどであった。現在も手摘みによる収穫が行われ、最盛期には800-1200人の季節労働者が雇用されている。また、何世紀にもわたる伝統に則り多くのワインが木製の大樽で保管されている。
68.ヴルシャツ(Vršac) 地区
69.ベーラ・ツルクヴァ(Bela Crkva)地区
70.デリブラツカ・ペスツァラ(Deliblatska peščara)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)イタリアンリースリング(栽培面積の50%以上を占める)、ライン・リースリング、ピノ・ブラン、シャルドネ、ムスカット・オトネル、トラミネール、クレアカ、スメデレヴカ、シュプリャンカ、シャスラ/(黒ブドウ)ムスカット・ハンブルク、フランコヴカ
【原産地呼称】
ヴルシャツのチャンピオンビール(Vršačko šampion pivo)/ヴルシャツのハム(Vršačka šunka)
バチカ地方(BAČKI REJON)
バチカ(Bačka)地方は、点在するテメリン(Temerin)、バチキ・モノシュトル(Bački Monoštor)、カラヴコヴォ(Karavukovo)の3地区で構成されている。この地方ではスレムスキ・カルロヴィツの果物ブドウ栽培研究所で開発された品種の栽培も多く行われている。
11.バチキ・モノシュトル(Bački Monoštor)地区
72.クラヴコヴォ(Karavukovo)地区
73.テメリン(Temerin)地区
【主な栽培品種】
(白ブドウ)ジュプリャンカ、パノニア、ネオプランタ、シーラ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、イタリアンリースリング、ソーヴィニョン・ブラン、ライン・リースリング、コスモポリタ/(黒ブドウ)ディンカ、メルロー、ガメイ、ブラウ・フランキッシュ、ピノ・ノワール、プロブス
【原産地呼称】
アパティンの「jelen」ビール(Apatinsko jelen pivo)/ペトロヴァツのソーセージ(Petrovska Klobasa, Petrovačka kobasica)/レメシュの「クーレン」ソーセージ(Lemeški kulen)
コソヴォ(Kosovo)地域
コソヴォのワイン産業は2つの法律に準拠している。すなわち2つのワイン地域(北メトヒヤと南メトヒヤ)を定義するセルビアのワイン法と、地元のアルバニア人が採用し、2つのワイン地域(ドゥカジニ地域とコソヴォ)を定義するコソヴォワイン法である。
南セルビアのワイン生産は、中世ネマンチッチ王家の時代にコソヴォとメトヒヤから始まった。南部に位置するコソヴォ地域は、山地の多い大陸性の気候を有し、中世からはじまるブドウづくりが修道院で続けられている。この地方は、中欧と南欧、アドリア海と黒海をむすぶ地点に位置し、山地の多い大陸性の気候である。UNESCO世界文化遺産に登録されている正教会の修道院が、デチャニ、グラチャニツァ、ベーチ、プリズレンの各地にあり、修道院のぶどう畑でつくられる葡萄酒は、コソボ・メトヒヤ・ワインとして、とくに人気を博している。北メトヒヤ最大のワイン生産地域はイストク(Istok)、南メトヒヤ最大のワイン生産地域はオラホヴァツ(Orahovac)である。
74.北メトヒヤ地方(SEVERNOMETOHIJSKI REJON)
75.南メトヒヤ地方(JUŽNOMETOHIJSKI REJON)
【主な栽培品種】
(白ブドウ)スメデレヴカ、イタリアンリースリング、シャルドネ、ライン・リースリング、ジュプリャンカ/(黒ブドウ)ヴラナッツ、テラン、プロクパッツ、ピノ・ノワール
【原産地呼称】
コソヴォのブドウ畑「アムセルフェルト」区画、「黒い鳥の畑」区画、「シャン・ド・メール」区画(Kosovo polje „Amselfeld“, „Field of the black bird“, „Champ de merle“)/コソヴォの「アムセルフェルダー・ワイン」(Kosovsko vino “Amselfelder”)/プリズレン(Prizren)/メトヒヤ(Metohija /Metohy)
【郷土料理】
淡水魚(マス、ウナギ、ナマズ、コイ、チャブ、カワカマス、ザリガニ)