food&wine/料理とお酒

【Gastronomija Srbije / セルビアの食文化】

セルビアの蜂蜜(Srpski med)について

セルビアの蜂蜜(Srpski med)について

バルカン半島は古代ギリシャ、ローマ文化の発祥の地であるとともに、現在ユーロに加盟していない国もあることから「最初で最後のヨーロッパ」ともいわれている。蜂蜜は地域を象徴する食材のひとつ。穏やかな大陸性気候や豊かな植物群のおかげで、高品質の蜂蜜を生産するための環境が整っている。古代ギリシャでは蜂蜜は雲から到来すると考えられ、不死を約束してくれる神々の食べものと考えられていた。また、ローマ人は蜂蜜を「天国で生まれた空気の贈り物」と考え、神への捧げものとした。ギリシャ語では蜂蜜をmelisと言い、古代ローマで話されていたラテン語のmelは蜂蜜にまつわる様々な語源となっている。メリッサという女性名も蜂蜜を意味する言葉から来ている。

20171216231416.jpg20170409_01.JPGholy-resurrection-cath_07-1024x683.jpg

キリスト教では主は人類を照らす「光」。祈りの場にはその象徴であるロウソの灯りが不可欠である。修道院ではロウソクの原料である蜜蝋を得るために養蜂を行い、蜂蜜や蜜蝋は甘味料、添加物、自然療法の治療薬、防腐処理にも使われた。養蜂は非常に尊敬される職業となり、領主の館や地所には不可欠な技術とみなされ、中世には王族の中にも広がった。ローマ帝国が東西に分かれたのち、教会も西のカトリック、東の正教会に分かれていく。カトリック教会はミツバチと養蜂家の守護聖人として聖ヴァレンツィヌス(バレンタイン)を認定。4世紀にミラノ司教を務めた聖アンブロジウスも養蜂家、ミツバチ、ロウソク職人の守護聖人である。

 

現在のセルビア共和国はかつてのローマ帝国の一部であり、帝国を再統一したコンスタンティヌス大帝、ステファン・ドゥシャンなど18名の皇帝を輩出している。6世紀と9世紀の間、バルカン半島に定住したスラヴ人にとって主要な農業活動であった養蜂は、修道院や教会が普及に大きな役割を果たした。ローマ帝国を再統一しキリスト教を容認したコンスタンティヌス大帝は、皇太后ヘレナとともに列聖されている。 セルビアでは9世紀にキリスト教に改宗後、19世紀まで養蜂は修道士(のちには教員も)が携わる仕事であった。1920年度以降は国家が養蜂を推進し、1962年の社会主義体制後、産業が飛躍的に発展した。1998-1999年のコソボ紛争が原因で国境地帯の農業が崩壊した際には、地雷の撤去作業が完了するまでの間、養蜂は酪農や耕作に比べ迅速な利益をもたらし、より安全な代役を果たした。(写真1枚目はベオグラード、サヴァ教会にて。入り口付近にある台がふたつの台にロウソクを灯す。高いほうは生きている人のため、低いほうは亡くなった方のため。2枚目は、ミュシャの「スラヴ叙事詩」に描かれたステファン・ドゥシャン。3枚目はStroll Tipsより、聖へレンが描かれたニコライ堂 主聖堂のイコノスタス)

【blog】セルビアのラキヤについて Srbska Rakija を追加しました20171216231638.jpg

ミード(mead)は蜂蜜が発酵した酒で、人類最古のアルコール飲料であろうと言われてる。古来語のmeoduを語源とし、バルカン半島でも古代から親しまれ、世界各地で飲まれている。 修道院では聖体礼儀のためのワインとともにミードを醸造し、収入を得る糧ともなった。また、セルビアの代表的な地酒ラキヤ(rakija)にも、はちみつを使用したものがある。蜜蝋で封印された瓶もよく見うけられ、現在も生活のさまざまな場面で養蜂の産物が余すところなく利用されている (日本の鮫や鯨に捨てるところなしと言いますが、それに通じるものを感じる)。 

 2015-09-22 157.jpg20180716211136.jpg

2012年現在、セルビアでは31,000人の養蜂家が年間約6、865トンの蜂蜜を生産している。そのうちプロの養蜂家は266件で、94.7%が家庭内での事業である。2015年に訪問したセルビアの農園でも牛の放牧、養鶏とともに養蜂に従事していた。ゆずっていただいた蜂蜜の美味しかったこと!!

グリーンマーケットで野菜や果物、蜂蜜の瓶に群がっているのは蜂。屋外の食事でワインの甘い香りに誘われてくるのも蜂。いちいち怖がっていたら身が持たないうえ、バルカン半島に生息するカーニオラン種の蜂は大人しく、手で払いのけられるので親しみさえ覚る。黒い瞳と灰色の縞模様が印象的。現地ではカルニカと呼ばれ、スロヴェニア(旧ユーゴ)が原産。のんびりゆっくりと飛ぶ姿は、喩えて言えば、血を吸い過ぎて重たくなり過ぎた蚊のようであった(日本の養蜂の主流はイタリア原産の「西洋ミツバチ」であるが、一部ではカーニオランの女王蜂も輸入されている) 

【Gastronomija Srbije / セルビアの食文化】セルビアの蜂蜜について を追加しました20160919_075322837.jpg

蜂蜜はスーパーマーケットでも販売されているが、人々は信頼できる養蜂家から直接を買う傾向がある。さまざまな花から採集された蜂蜜、巣入りのコムハニー、花粉、プロポリス、薬効をうたったものなど、さまざまな製品が売り場に並んでいる。 なかでも人気はヒマワリ蜜である(オンラインショップでも販売中)。

カメノボ(Kamenovo)村では毎年4月にバルカン地域から、何百人もの養蜂家を集める伝統的な2日間のフェアが行わる。小さな村ながら4千以上の蜜蜂の巣箱があるため、「蜂の巣村」として知られており、ほかにも各地ではちみつフェアは開催されている。また、ホモリェ山脈(Homolje)で生産されるホモリェ蜂蜜(Homoljski med)は特に有名で、フルシュカ・ゴーラの菩提樹蜂蜜(Fruškogorski lipov med)、ジェルダップの蜂蜜 (Đerdapski med)カチェルの蜂蜜(Kačerski med)とともに、欧州連合(EU)が定める原産地名称保護の対象にもなっている。

 

参考書籍、参考サイト

『ハチミツの歴史 (「食」の図書館)』作者: ルーシー・M.ロング,大山晶

REPUBLIC OF SERBIA MInistory of Agricalture, Forestory and Water Managemtent.

Bee Keeping in the Balkans