food&wine/料理とお酒
Srpsko Vino / セルビアワインの歴史
セルビア地方におけるワイン製造の技術は、紀元200年頃にローマ軍によってヴォイヴォディナ地域にもたらされた。ドナウ川流域はローマ帝国の歴史上、守りの要衝地として駐屯地が置かれ、兵士や入植者へのワインの安定供給のためにブドウ栽培を行ってきた。
ローマ人が到着する以前にも、この地域のイリュリヤ人、トラキア人、ケルト人は、ブドウ栽培を行っており、現在のヴォイヴォディナ州にあるシルミウム遺跡で、鉄器時代と青銅器時代(紀元前400〜200年)に属する野生ブドウの化石が発見されている、ベオグラード地方のヴィンツァ遺跡(Vinča)でも野生のブドウやアンフォラが発見されているが、アンフォラにブドウまたは発酵小麦から作られた今日のワインやビールと同様の飲み物を含んでいたことは確認されていない。
4世紀のキリスト教公認以前からワインは食事時に飲まれていた。聖書とキリスト教もまた、アルコールは人生をより楽しくする神からの贈り物であると教え、聖体はパンとワインで構成されていた。紀元92年のローマ皇帝ドミティアヌス(西暦56〜96年)の勅令により、ローマと競合するブドウ畑の引き抜きが命じられると、バルカン半島の州でのブドウ栽培も禁じられた。
セルビア地方でのブドウ栽培の実際のはじまりは、ローマ帝国の2番目の皇帝マルクス・アウレリウス・プロブス(Marcus Aurelius Probus 276-282)によりシルミウム(現在のスレムスカ・ミトロヴィツァSremska Mitrovica)周辺に最初のブドウが植えられたと伝えられている。ローマ軍がバルカン半島に到着し、禁止令が解除されると兵士がブドウの木を植え始めた。ローマ帝国がブドウ栽培を促進すると土地の人々もそれにならい、地域の人口が増加した。
ローマ帝国の衰退後、西ヨーロッパと中央ヨーロッパのワインの生産と消費は大幅に減少したが、東西教会(特にビザンチン教会)はブドウ栽培とワイン造りの慣行を守っていた。中世のセルビアでは王家と正教会がワインづくりを奨励した。夏は暖かく、冬は非常に寒い大陸性の気候と砂質の肥沃な土壌を生かし、ワインは人々の間で真の国民的飲料となった。1168年にネマニッチ王朝が成立すると、ワインづくりが奨励された。セルビア初の明文化された法律である「ドゥシャン法典(Dušanov zakonik)」にもワインの製造や販売に関する法律が詳細に記されている。
15世紀末から500年にわたるオスマン帝国の支配下では、イスラム教の戒律によりアルコール飲料が禁じられた。この時期に主に中東から生食に適したブドウ品種と乾燥の技術がもたらされた。ワインづくりは修道院内で守られた。
19世紀の終わりには、セルビアのブドウ栽培はヨーロッパと同じ運命をたどった。フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の繁殖により土着品種は絶滅に瀕し、多くのブドウ畑が荒廃した。1878年のベルリン会議で独立が国際的に国家の承認をうけると、カラジョルジェヴィッチ(Karađorđević)王朝とオブレノヴィッチ(Obrenovići)王朝の庇護のもと、オーストリアやハンガリーから近代的な技術をとりいれ、ワイン産業は黄金期を迎えた。主にフランスから導入された国際品種に加え、プロクパッツ(Prokupac)、タミヤニカ(Tamjanika)などの土着品種も注目をされるようになった。1912年に沈没したタイタニック号のワインリストにもスレムスキ・カルロヴツィ(Sremski Karlovci)のデザートワイン(ベルメット Bermet)が採用されていたのもこの頃である。 また、この時期に遡るネゴティン渓谷地方(REJON NEGOTINSKA KRAJINA)の醸造文化は、ユネスコ文化遺産に登録されている。
1945年以降の旧ユーゴスラヴィア時代には国営の大規模農園でブドウの大量生産が行われた。最盛期には世界の10大産地にも選ばれが、多くのワインは製造過程におけるすべての段階で質よりも量に重点が置かれていた。限られた品種のみが栽培され、多くの土着品種がこの時期に姿を消した。1980年代には生産と輸出の急激な減少が見られた。1990年代のユーゴスラビアの崩壊によりブドウ畑は破壊をうけ、その後のセルビア経済の崩壊に伴いワイン産業も低迷を続けた。
2000年代になると数多くの小規模ワイン醸造農家が市場に参入し、ブドウ栽培はセルビア農業の先進部門となっている。品質質重視の生産者が土着品種と国産品種を用いた高品質なワインを生産し、ベルメットなど、忘れられかけていた伝統も復活した。国の景気回復も国内消費の増加に貢献した。2019年の生産量約425,000tは世界15位である。輸出量は国内生産の5%にとどまり、そのほとんどが近隣諸国むけである。
セルビアのテロワール(気候・風土・土壌)
ワイン産地の分類は、その地域の気候変動、土壌タイプ、植物、人間への影響など、特定の地域の相互作用する生態系(=テロワール)に基づいて行われる。世界のトップワインのほとんどは、北半球と南半球の緯度30°と50°の間の「ワインベルト」で生産されており、この地域のテロワールはブドウやワインの品質に重要な役割を果たしている。ブドウの根は地下6mもの深さに達することもあるため、根を張りやすく水はけのよい小石交じりの砂質土壌を好む。果実は気温が 27℃になると成熟するため、4月の萌芽期から6月の開花、9月の終わりから10月までの収穫期の生育期の気温が重要である。熟成中にこの最適温度に達するまでに要する時間の長短、風、気圧、毎日の気温の変化など、ブドウの成熟に影響を与えるその他の気候要因は、テロワールによって異なる。世界のワイン生産地域を比較することにより、テロワールとワインの品質の間に関係を確立することが可能である。
セルビアは、中央ヨーロッパと南東ヨーロッパの交差点にあり、その範囲は北部のカルパチア山脈・アルプス山脈・ディナル・アルプス山脈の尾根に囲まれた肥沃な盆地の南端から、南東の古代の山と丘に及んでいる。東または南向きの斜面が理想的な立地条件といえる。緯度は高品質のブドウの収穫がみこまれる北緯41°から47°の間である。国土の総面積88,509㎢(コソヴォ自治州を含む)は北海道ほどの大きさであり、その65%を農地が占めている(2015年)。ドナウ川が588 kmに渡り国土を横断し、西からのサヴァ川、北からのティサ川と合流ののち、南でボスニアおよびヘルツェゴビナとの境を流れるドリナ川、北西でクロアチアとの境を流れるモラヴァ川を集めて南東でルーマニアとの国境を形成している。
セルビアの気候は地域ごとに地形から受ける差が大きく、北の平原は乾燥した寒い冬と、蒸し暑い夏の大陸性気候を有している。北部に広がるパンノニア平原は、カルパチア山脈・アルプス山脈・ディナル・アルプス山脈の尾根に囲まれたパンノニア盆地のうち、パンノニア海(Pannonian Sea)が干上がって残された平地である。
パンノニア海は、古代に存在した浅い海であり、現在のドナウ川がカルパチア山脈を横断する部分の峡谷「鉄門」(Gvozdena vrata)から流れ出し、最大時にはセルビア南部まで広がっていた。現在のモラヴァ川渓谷に位置した湾はグルデリカ(Grdelica)、ヴラニェ(Vranje)、プレシェヴォ渓谷(Sukobi u okolici Preševa)を経由ののちエーゲ海とつながり、フルシュカ・ゴーラ(Fruška Gora)や、ヴルシャツ(Vršac)山脈は、かつての島々の名残である。およそ60万年前に消滅するまでの900万年間に3-4000mの海洋堆積物が堆積し、地盤に厚い層が形成された。
海が干上がったのち”ヨーロッパのサハラ”であった名残は、デリブラツカ・ペシュチャラ特別自然保護区内の砂地(The Deliblato Sands Special Natural Reserve)にみられ、ユネスコ(UNESCO)の文化遺産にも登録されている。
北部の平野部とドナウの渓谷では、冬に北極圏と西ヨーロッパからの気団が南向きに張り出して寒気がもたらされる。夏にはサハラからの熱気が地中海を通して侵入し、北西と西からの風が強く吹く。秋から冬にかけては、カラパチア山脈から吹き降ろす南東からの冷たい風(コシャバ・Košava)が強く、朝方の気温が低下する。平均気温は平地(標高が300 mまで)で11.6℃、高地(標高が300〜500 m)はおよそ11.0℃(1981〜2017年)。南西部を除き夏の初めの5月〜6月が最も雨が多く、 2月と10月は降水量が最も少ない。寒い冬と晴れた日の多い暖かい夏は、ブドウに適し、ローマ時代からブドウが栽培されていた。
4つの山系からなる南部の山間部は山岳性の気候である。カルパチア山脈は石灰岩質の山脈であり、北東から大モラヴァ川に沿って伸び、スタラ・プラニナ(Stara planina あるいはバルカン Balkan)山脈は南モラヴァ川に沿って南北方向に伸びている。これらの山地とアドリア海とパンノニア平原は気候に影響を与えており、南西部の山岳地帯では南西風が強い。
中央から南部にかけての地形は主に丘と低から中高山で構成されており、山岳地帯の合い間を縫うように流れる大モラヴァ川(Velika Morava)、西モラヴァ川(Zapadna Morava)、南モラヴァ川(Južna Morava)の3河川からなるモラヴァ水系(トリモラヴェ)が、支流の小さな川とともにネットワークを形成している。
南西部はアドリア海から流れ込む空気の影響をうけた地中海性気候であり、夏は暑く、冬は穏やかである。ディナル・アルプス(Dinarske planine / Dinaridies)は北西から南東に伸びる最大の山地であり、ズラティボル(Zlatibor)とコパオニク(Kopaonik)はこの地域の最高峰である。西モラヴァ流域のコパオニクは年間降水量が最も少なく晴れの日が年間200日を占めている。
セルビアの主なブドウ品種
※品種名は、それぞれの写真と特徴を掲載したページにリンクしています。
1.白ぶどう
①セルビアの土着品種
②国内の交配品種
- ジュプリャンカ(Župljanka)
- シーラ(Sila)
- ペトラ(Petra)
- モラヴァ(Morava)
- ネオプランタ(Neoplanta)
- パノニア(Panonia)
- コスモポリタ(Kosmopolita)
③中央ヨーロッパの土着品種
- ムスカット・クロカン(Muskat Krokan)
- リースリング・イタリコ(Riesling Italico)
- フルミント(Furmint)
- メーゼス・フェーヘル(Mézes Fehér)
- ジラヴカ(žilavka)
- オテロ(Otelo)
- プレメンカ(Plemenka)
- ムスカット・オトネル(Muscat otonel)
- スレムスカ・ゼレニカ(Sremska Zelenika)
- バグリーナ(Bagrina)
- ルカチテリ(Rkaciteli)
④国際品種
- シャルドネ(Šardone)
- ラインスキ・リースリング(Rajnski Riezling)
- ソーヴィニョン(Sovinjon》
- セミヨン(Sémillon)
- トラミナック(Traminac)
- ベロ・ブルグンダック(Belo Burgundac)
- シヴィ・ブルグンダック(Sivi Burgundac)
2.黒ぶどう
①土着品種
②国内の交配品種
③中央ヨーロッパの土着品種
- フランコヴカ(Frankovka)
- ヴラナッツ(Vranac)
- ツルナ・タミヤニカ(Crna Tamjanika)
- カダルカ(Kadarka)
- テラン(Teran)
- ポルトゥギーザ(Portugizer)
- フェテアスカ・ネアグラ(Fetească Neagră)
- プロヴディーナ(Plovdina)
- ディンカ(Dinka)
④国際品種
セルビアワインの法律と品質分類
2008年に、欧州連合(EU)はワインの地理的表示のシステムの改革をはじめ、それを他の農業食品のシステムと同等とした。このPGI / PDOシステムにならい、セルビア農林水管理省は、2012年4月にワイン品質表示(Deklarisanje vina)「スティルワイン、特定の特別なワイン、その他の生産および貿易における製品の包装、申告および表示の方法に関する条例の改正」を公布し、ワイン法(Zakon o vinu)の改正を行った。その内容は、欧州委員会(EC)の規制および、EUの加盟国でのワインの表記と提示の方法の変更をうけ、セルビア共和国内での製品の包装、申告およびラベル表記をEUの要件に準拠させるものである(2020年9月現在EU加盟交渉中)。
上記の新しい国内法に基づく表記は以前と大きく異なるため、このプロセスでワインを適切に表記し、ワインの生産者と輸入者を支援するための、新たな国産および輸入ワインに対する管理番号の割り当てが導入された。また、2016年7月に発効された改正条例では、地理的表示の不正使用の禁止、地理的由来のないワインの地理的表示の表記の禁止、歴史的国内および地理的表示などの質の高いワインではないワインにおいて、地域的に重要である品質を強調する表現が禁止された。輸入ワインをセルビア語で表記する場合、輸入者は地理的表示や伝統的な表現を翻訳しない義務(それらはワインが生産された国の言語で表記されている)が制定された。
1.セルビアワインの分類
セルビア共和国のワインは、スティルワイン(In stricto sensu)、スペシャルワイン(Specijalnih vina)、蒸留ワイン(Vino za destilaciju)の3つに大別される。スティルワインは、醸造技術によって生産されたワインであり(通常の発酵により、目に見える発泡の放出されていない)、テーブルワインと原産地呼称を持つワインに大別される。
スペシャルワインは、醸造用ブドウとブドウに限らず特定された原料で特定な手順で生産されたワインである。スペシャルワインは、天然デザートワイン(Prirodno desertno vino)、リキュールワイン/酒精強化ワイン(Likersko vino)、アロマワイン(Aromatizovano vino)、発泡性ワイン/スパークリングワイン(Penušavo vino)、優良発泡性ワイン(Kvalitetno penušavo vino)、芳香性優良発泡性ワイン(Aromatizovano kvalitetno penušavo vino)、炭酸ガス添加発泡性ワイン(Gazirano vino)、弱発泡性ワイン(Polupenušavo vino)、炭酸ガス添加弱発泡性ワイン(Slabo gazirano vino)とその他の特別なワインに分類される。
蒸留ワインは蒸留用のワインである。
2.ラベルの表記
ワインは地理的表示に直接関係する品質を有する農業食品である。欧州連合(EU)では、ワインは地域(ボルドー、リオハなど)で分類されることが最も多く、ヨーロッパ以外のワインはブドウ品種(ピノ・ノワール、メルローなど)で分類されている。セルビア農林水管理省はEUの規制にならい、地理的表示ワインの品質分類における新しいカテゴリーラベルを導入した。品質カテゴリーラベル、すなわち品質と原産地ラベルに関する手順は、2010年に採択された。地理的表示のワインは、特定のワイン生産地域の生産地域(地方、地域、またはブドウ園)で生産され、ワインは地域、品質、最高品質であることが保証される。また、独立した官能評価が行われ、品質と起源が記録されている。2009年の収穫以来、地理的表示のワインは品質カテゴリーラベル付きのワインのみである。品質カテゴリーラベルのないワインは、地理的表示のないテーブルワインである。
ワイン品質表示(Deklarisanje vina)におけるラベルの必須情報
品名:品種名のみで表記されている場合には、名称に特定の単語を追加する必要がある。
種類:スティルワインの場合「白ドライワイン」など、色、甘さなどの表現と組み合わせることが可能。
内容量:ℓ、cl、またはmlで表示。
アルコール含有量:「% vol」に「Alk/Alc」等の略語を付記し、アルコールであることを示す。
原産国:ブドウまたはワインが外国産の場合は、その原産国を記載。
瓶詰者の名称と住所:生産の最終過程における品質と安全性の責任者としての瓶詰者に関するデータを表示。
ロット:ロットごとに個別の検査を要し、ワインが適切な品質を持っていないと判断された場合は、そのロットのみが対象となる。
アレルギー表示:アレルギー反応を引き起こす可能性のある成分が含まれている場合に表示(「亜硫酸塩を含む」など)。
甘さの表現:発泡性ワイン、炭酸ガス添加発泡性ワイン、優良発泡性ワイン、および芳香性優良発泡性ワインにのみ義務付けられる。
管理番号:ラベルの下部に、上記すべてのデータが管理および承認されたことを表示。
3.原産地呼称について
ワイン法ではワインのカテゴリー別にルールがあり、そのカテゴリーはまず「地理的表示付きワイン」と「地理的表示なしワイン」に分けられる。上級ワインである地理的表示つきワイン(ヴィーノ・サ・ジオグラフスキム・ポレクロムVino sa geografskim poreklom)は、同一の地域、国、収穫年からのものであり、高品質が保証されている。また、地理的表示を持つワインは、品質、社会的評価、その他の特性のいずれかにより認められた、地理的表示保護ワイン(EUのPGIに相当)と、固有の自然的・人的要素、特別な地理的環境により定められた、原産地呼称保護ワイン(EUのPDOに相当)に分類される。また、原産地呼称保護ワインは、高品質ワイン(K.P.K)とプレミアムワイン(K.G.P.K)に分類される。
上級ワインには、地理的起源の指定、保管寿命、製造日(充填日)の記載が義務付けられており、品質カテゴリーラベルを付ける権利も有している。品質ごとに異なるカテゴリーラベルは、地理的表示、地域、品質の段階ごとにそれぞれ異なる色とした。また、分類を表す伝統的な表現の略語を定義する際は、文字数の増加に伴い品質も向上することを意図的に強調し、消費者がワインの分類を容易に認識することを可能とした。
品質カテゴリーラベルの記載事項
地理的表示保護ワインの品質カテゴリーラベルは、セルビア政府の紙幣研究所(Institute for Manufacturing Banknotes and Coins - Topčider )において印刷が行われ、外観、内容、表示方法が条例により定められている。
偽造防止:ホログラムから凹版印刷までのいくつかのタイプの保護
セルビア共和国の国章:品質とブドウとワインがセルビア産であることを保証
品質分類:G.I.(Г.И.)、K.P.K.(К.П.К.)、K.G.P.K.(К.Г.П.К.)※カッコ内はキリル文字
収穫年
独自のシリアル番号:農林水管理省のデータベースと紙幣生産局により管理されたワインと生産者の番号
ストノ・ヴィーノ(Stono vino) 地理的表示のないワイン
テーブルワイン。ヴィティス・ヴィニフェラ種の1つ以上の許可されたブドウ品種、およびヴィティス・ヴィニフェラ種とヴィティス・ヴィニフェラ種の交配種からつくられた地理的表示のないワイン。EUならびにバルカン諸国の法律およびその他の規制に従い、規定された品質と生産方法を満たしている。
レジオナルノ・ヴィーノ(Regionalno vino)
EUのPGIに対応した地理的表示保護ワイン(geografska indikacija 略称GI)である。緑ラベル。ヴィティス・ヴィニフェラ種の推奨される1つ以上のブドウ品種、および(または)ヴィティス・ヴィニフェラ種とヴィティス・ヴィニフェラ種および(または)の交配種からえられたブドウ品種により、同一の栽培単位から収穫された85%以上のブドウで生産されたワイン。
クヴァリテトノ・ヴィーノ・サ・コントロリサニム・ゲオグラフスキム・ポレクロム・イ・クヴァリテトム (Kvalitetno vino sa kontrolisanim geografskim poreklom i kvalitetom 略称KPK)
EUのPDOに対応した地理的表示と品質が管理された高品質ワインである。赤ラベル。1つ以上のヴィティス・ヴィニフェラ種の推奨ブドウ品種ウから生産されており、同じワイン生産地域に由来する品種または品種の顕著な特徴を持ち、ブドウの生産と処理およびワイン生産は、この法律およびその他の特別な規制に従い、規定されたブドウの許容収量、このカテゴリーのワイン生産の品質および方法に従って特定のワイン生産地域内で行われている。
ヴルフンスコ・ヴィノ・サ・コントロリサニム・イ・ガラントヴァノ・ゲオグラフスコ・ポレクロ・イ・クヴァリテト(Vrhunsko vino sa kontrolisanim i garantovanim geografskim poreklom i kvalitetom 略称KGPK)
EUのPDOに対応した地理的表示と品質が管理され保証されたプレミアムワインである。紫ラベル。ヴィティス・ヴィニフェラ種の1つ以上の推奨ブドウ品種のブドウから生産され、同じワイン生産地域に由来する品種または品種に特に顕著な特徴があり、ブドウの生産と処理およびワイン生産は、この法律およびその他の特別な規制に従い、規定されたブドウの許容収量、この分類のワイン生産の品質および方法に従って特定のワイン生産地域内で行われる。
セルビアワインの産地と特徴
セルビアでは、地理的な位置と気象条件により、国のほぼすべての地域でブドウ栽培が可能である。ワイン産地は1970年代に9つの地域と、それぞれいくつかの地区に分類されていた。2013年の原産地呼称の制定と産地の再分類により、22の地方(Rejonizacija)が定義され、2015年の改正により中央セルビア、ヴォイヴォディナ、コソヴォの3つの地域と、75地区に細分された。
※産地名は、それぞれの地域の特徴と主な栽培品種、原産地呼称、郷土料理についての説明ページにリンクしています。
1.中央セルビア(Centralna Srbija)地域
コスマイ(Kosmaj)山、ルドニク(Rudnik)山、ヴェナチャク(Venačac)山のふもとの丘の上に広がるベオグラードでは、ドナウ川とサヴァ川の合流地点にある。中央セルビア地域は13地方の57地区でブドウが栽培されている。ルーマニアの国境近くには、ヨーロッパ最大・最長のジェルダップ(Đerdap)峡谷がある。ドナウ川が南カルパチアの山あいをえぐってできた峡谷で、支流のモラヴァ沿岸の斜面ではブドウ栽培がさかんである。最も有名な産地は、ルーマニア、ブルガリア、セルビア三国の国境に近い東部のネゴティン渓谷(Negotin)地域である。ドナウ川南岸に位置するベオグラードの砂質土壌は、スメデレフカ種の栽培に最適であり、スメデレフカ・ワインの最大産地となっている。西モラヴァ川流域地方のオブチャル山とカブラル山の渓谷には、オブチャル・カブラル修道院郡があり、オスマン帝国支配の時代を通してワイン製造の伝統が守られてきた。南部には、プロコップ(Prokop)とトポラ(Topola)があり、人びとは古くから土着品種の栽培はじめていた。カラジョルジェヴィッチ王家のブドウ園も、トポラのオプレナッツ(Oplenac)で続いている。
①ポツェリナ・ヴァリェヴォ地方(POCERSKO-VALJEVSKI REJON)
②ネゴティン渓谷地方(REJON NEGOTINSKA KRAJINA)
③クニャジェヴァッツ地方(KNJAŽEVAČKI REJON)
⑩チャチャク・クラリェヴォ地方(ČAČANSKO – KRALJEVAČKI REJON)
2.ヴォイヴォディナ(Vojvodina)地域
サヴァ川とドナウ川の北に位置するヴォイヴォディナ地域に広がるパンノニア平原は、古くは海底であった。ヨーロッパでもまれな肥沃な砂原が広がり、スボティツァ(Subotica)地方の肥沃な土壌はブドウの栽培に最適である。北部では豊かな酸味の最高品質の白と軽やかな赤、南部では芳醇な香りの白とフルボディの赤ワイン作られている。7つの地域の17地区でブドウ栽培が行われている。現在、ヴォイヴォディナ自治州スレム郡の行政的な中心都市であるスレムスカ・ミトロヴィツァ(Sremska Mitrovica)は、紀元3世紀にはローマ帝国の4つの首都の1つであった。フルシュカ・ゴーラ国立公園の全長80kmに及ぶ丘陵の斜面では、ローマ時代からブドウ栽培が盛んでワインの産地として有名である。
⑲ユジュニバナト地方(JUŽNOBANATSKI REJON)
コソヴォのワイン産業は2つの法律に準拠している。すなわち2つのワイン地域(北メトヒジャと南メトヒジャ)を定義するセルビアのワイン法と、地元のアルバニア人が採用し、2つのワイン地域(ドゥカジニ地域とコソヴォ)を定義するコソヴォワイン法である。南セルビアのワイン生産は、中世ネマンチッチ王家の時代にコソヴォとメトヒヤから始まった。南部に位置するコソヴォ地域は、山地の多い大陸性の気候を有し、中世からはじまるブドウづくりが修道院で続けられている。この地方は、中欧と南欧、アドリア海と黒海をむすぶ地点に位置し、山地の多い大陸性の気候である。UNESCO世界文化遺産に登録されている正教会の修道院が、デチャニ、グラチャニツァ、ベーチ、プリズレンの各地にあり、修道院のぶどう畑でつくられる葡萄酒は、コソボ・メトヒヤ・ワインとして、とくに人気を博している。北メトヒヤ最大のワイン生産地域はイストク(Istok)、南メトヒヤ最大のワイン生産地域はオラホヴァツ(Orahovac)である。
㉑北メトヒヤ地方(SEVERNOMETOHIJSKI REJON)
㉒南メトヒヤ地方(JUŽNOMETOHIJSKI REJON)
参考書籍・参考サイト
1.参考書籍
『SOUL FOOD SERBIA』セルビア観光局
『セルビア 心のリズムで生きる』セルビア観光局
『ワインの世界地図-56カ国92地域のワイン産地の歴史と現在-』
『日本ソムリエ協会教本 ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパート2006』
『アンリ・ジャイエのワイン造り』ジャッキー・リゴー
『花摘む人-ヴィラデストワイナリーができるまで』玉村豊男
2.参考サイト
Vinogradarstvo i vinarstvo Arhive - Ministarstvo poljoprivrede, šumarstva i vodoprivrede
EU MAG 伝統と品質の欧州ワイン ~EUのワイン法とワイン産業~
Markica na vinu garantuje kvalitet - Politika
Srbiju volimo - Smederevka - autohtona sorta Srbije
ETIKETE BEZ SUMNJE (Reforma deklarisanja vina u Srbiji) -Wine Style
What You Need to Know About Serbian Wine
Serbia: Europe’s secret wine country
Republic of Serbia The Intellectial Propety Office
Crvena vina Balkana - Wikipedia
Christian views on alcohol - Wikipedia
Ancient Rome and wine - Wikipedia
Geography of Serbia - Wikipedia
Made in Serbia | JancisRobinson.com
Jedinstvena sorta grožđa i vina “muskat krokan” lako može da nestane!
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Bagrina – Danube Valley wine secrets
UNESCO World Heritage Centre - Tentative Lists, Serbia