food&wine/料理とお酒
Mézes Fehér(メーゼス・ヘーフェル)《中央ヨーロッパの土着品種》
かつて中央ヨーロッパで広く普及し、主に混合栽培で栽培されていた。メーゼス(Mézes=ハンガリー語で「蜂蜜」)という名前は、ブドウの糖度の高さに由来していると考えられるが、ハンガリーでは現在はほとんど栽培されていない。たいへん甘い白ブドウで、オレンジワインもつくられている。
Muskat Krokan(ムスカット・クロカン)《中央ヨーロッパの土着品種》
この品種によるデザートワインのベルメット(Bermet)には、20種類以上のハーブとスパイスを加えられ、独特の芳醇さと濃い黄金色が出ることで知られる。
ムスカットクロカンは、スレムスキ・カルロヴツィ(Sremski Karlovci)の地域の伯爵であり領主であるリポット・ロホンチ(Lipot Rohonczy)によりフランスから紹介された(一説によると、アルジェリア賭けに買って新芽を受け取ったとも言われている)。いくつかの場所に植えられたが、ビセルノ・オストロヴォ(Biserno Ostrvo「真珠島」という意味)と呼ばれている区画でのみ根づいたといわれている。地所の一部に、現在も存在する小さな城とワインセラーを建て、息子のギデオン・ロホンチ(Gedeon Rohonczy)はブドウ栽培とワインの生産を続けた。当初は自家用と特別な贈り物に限定されていたが、後にマスカットクロカンの名前で販売したワインはブダペスト、ロンドン、その他のヨーロッパ市場で販売され人気を博した。第二次世界大戦後、この財産はロホンチの相続人から没収され、「ソコラック」がブドウ畑を継承し、政治家に愛された。
【主な産地】
スレムスキ・カルロヴツィ(Sremski Karlovci)の「ビセルノ・オストロヴォ(Biserno ostrvo)区画」のみ
Otelo(オテロ)《中央ヨーロッパの土着品種》
テーブルワインやジュース、ワインの生産に使用される白ブドウ品種。カビ、黒腐病、およびフィロキセラに耐性を示し、台木としても使用される。
皮がむけやすく運搬に適さないため、小規模な生産者が限られた地域でのみの販売を行っている。
Petra(ペトラ)《セルビアの交配品種》
クンバラ(Kunbarat)×ピノ・ノワールの交配種。冬の低気温への耐性を導入することを目的として1991年に承認された。
糖度が高く、非常にはっきりとした上質なマスカットの香りを持つ。収穫期は9月中旬。ワインは高品質で調和のとれた味わいの、やや甘口の白。
Plovdina(プロヴディナ)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=リシチーナ(Lisicina)=スランカメンカ(Slankamenka)
バルカン半島全体(マケドニア、アルバニア、トルコ、ルーマニア、ギリシャ、ブルガリアで見られる古代のバルカン品種である。ブルガリアではパミッド(Pamid)とも呼ばれている。セルビアでは、レッドスランカメンカとも呼ばれ、フルシュカ・ゴーラの有名な場所、スランカメンカに由来している。「大きな狐」(リシチーナ)という別名も持つ。収穫期は9月中旬。アルコール度数と酸味が低いため他の品種ブレンドされることが多い。ロゼや赤ワインに用にプロクパッツと同じ畑で植えられていた歴史がある。
【主な産地】
Portugizer(ポルトゥギーザー)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=ポルトゥギザック(Portugizac)=ブラウ・ポルトギーザー(Blauer Portugieser)
かつては、オーストリアの大使であった男爵フォンフリースが18世紀にポルトガルから中央ヨーロッパの地域にもたらしたと考えられていた。DNAの研究により、中央ヨーロッパに由来し、かつてオーストリア・ハンガリー帝国全体で一般的であったという説が有力である。ヴォイヴォディナ地域では、20世紀初頭に最も多く見られた黒の品種の1つ。果実は中粒で、丸みを帯びた濃い青。包皮は薄い。収穫時期は9月初旬。
ワインは、淡色のライトボディのワインを生産することで定評がある。収穫時期が早いため、その年の初飲み用の、香りのよい酸味と果実味が豊かでやわらかなワインが作られる。セルビアでは伝統的に「スヴァトヴァック(svatovac)」と呼ばれ、若い消費者向けである(スヴァット(svat)は結婚式の参列者という意味。結婚式やごちそうの季節が始まる秋に消費されるため)。
【主な産地】
スレム地方
Prokupac(プロクパッツ)《セルビアの土着品種》
【別名】=プロクプリェ(Prokuplje)=カメニチャンカ( Kameničanka)
南部のプロクプリェ(Prokuplje)原産。中世ネマニッチ王国がオスマン帝国に敗れた後も、ジュパ(Župa)に置かれていたラザール公(Lazar)のクルシェヴィツァ(Krševica)の畑で受け継がれ、「教区の王」と称されている。全盛期にはセルビア全土で栽培が行われていたが。絶滅の危機に瀕した当時は、ほとんどがジュパにあり、わずかにスメデレヴォに残されていた。近年はプロクプリェのトプリツァ(Toplica)地区での生産が盛んで、北部のヴォイヴォディナや南部にも広がりをみせている。シラー(Syrah)の別名であるとの意見もみられるが、DNA解析はまだ行われていない。
ワインは淡い色中程度のガーネット色。ブラックチェリーやレッドチェリー、ブラックベリー、プラム、スパイス、ペッパー、タバコ、または森の土の香りが含まれる。また、ハイビスカスの花の香りがすることもある。濃色のロゼが主流であったが、近年は単一品種での赤ワインの生産や、ボルドー・タイプなどの国際品種とのブレンドなど、熟成による効果など、品種の可能性をさぐる動きがみられる。
【主な産地】
ポツェリナ・ヴァリェヴォ地方、クニャジェヴァッツ地方、ネゴティン渓谷、シュマディヤ地方、トプリカ川流域地方、トリモラヴェ地方、ベオグラード地方、ムラヴァ川流域地方、ニーシュ地方、ニシャヴァ川流域地方、レスコヴァツ地方、チャチャク・クラリェヴォ地方、コソヴォ地域
Rkaciteli(ルカチテリ)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=ラカチテリ(Rkatziteli)ククラ(Kukura)=トポレク(Topolek)=ブダスリ(Budasuri)
紀元前3000年にさかのぼるジョージア原産の古い品種。、総酸含有量が非常に高く、白ワインの製造、ブレンド(酸のないワインとの)、およびワイン留出物の製造に使用される。名前の由来はジョージア語の「赤い木」より。主に東ヨーロッパの国々で栽培されている。
Riesling Italico(リースリング・イタリコ)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=ウェルシュリースリング(Welschriesling)=グラシェヴィナ(Graševina)=グラシャック(Grašac)=ラスキ・リースリング(Laški Rizling)=イタリアン・リースリング・ブーヴィエ("Italian" Riesling bouvier)
旧ハプスブルグ帝国圏内の中央ヨーロッパで多く生産されている。果実は肉厚な小粒でしっかりとした黄緑色。 収穫時期は9月下旬。ワインは緑がかった黄色で、軽くさわやかで調和のとれた味わいを持つ。
【主な産地】
ネゴティン渓谷、スボティツァ地方、スレム地方、トリモラヴェ地方、バナト地方、クニャジェヴァッツ地方、ユジュニバナト地方、ニーシュ地方、ニシャヴァ川流域地方、レスコヴァツ地方、ベオグラード地方、テレチカ地方、バチカ地方
Smederevka(スメデレヴカ)《セルビアの土着品種》
【別名】
=Belina(ベリーナ) =Dimjat(ディマット) =Semendra(セメンドラ) =Dartanija(ダルターニャ)
紀元前3世紀ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・プロブス(Marcus Aurelius Probus)の治世中に、ドナウ川の右岸スメデレヴォ(Smederevo)近郊にあるモンス・アウレウス(Mons Aureus)で栽培が始まったことに因み名付けられた。最上のワインは、ベオグラード地方で生産されている。ユーゴスラビアの社会主義時代には、大規模な工業用ワイナリーで生産が行わた。よく冷やして炭酸水で薄め、なかば水代わりに飲む「シュプリッツェル(špricer)」に最適な軽い夏のワインとして人気がある。
果実は黄緑色の大粒の楕円形で、日当たりが良い場所では琥珀色になる。収穫時期は10月。心地よい味と香りの、上質で軽くてフレッシュなワインの生産に使用される。おもにテーブルワイン用の土着品種とされ、ウェルシュリースリング(Welschriesling)とブレンドされることもある。よい年には、バニラを連想させる淡い黄色のワインとなる。近年では、品種の可能性が見直され、2008年に全米ソムリエ協会SERSAの後援の下で開催されたグランドテイスティングでは、「土着品種から作られた最高の白ワインのトロフィー」が授与された。
【主な産地】
主な産地:ベオグラード地方、バナト地方、ネゴティン渓谷、クニャジェヴァッツ地方、シュマディヤ地方、ユジュニバナト地方、ニシャヴァ川流域地方
Teran(テラン)《中央ヨーロッパの土着品種》
イタリアでテラノと呼ばれ、世界で最も古いブドウの1つでレフォスコ種に属している。鉄分が豊富な粘土ベースの土壌に適し、クロアチアのイストリア半島で多く生産されている。アマロとユーカリをほのかに感じさせる、レフォスコの特徴的なブラックベリーのアロマを示し、短期間で熟成すると美しくニュアンスのあるロゼワインを作り、完全に熟成すると甘美で豊かな優しい赤ワインになる。
【主な産地】
コソヴォ地域