food&wine/料理とお酒

Salate / サラダ

Mimoza salata / ミモザサラダ

セルビアで人気のパーティー料理の盛り付けは、ロール系、多層系があり、断面の美しさを追求します。ミモザ・サラダは後者の多層系。マッシュポテト、マヨネーズのソース、ハム、ピクルス、ゆで玉子、チーズと重ねていき、最後にマヨネーズで蓋をして卵黄をミモザの花に見立てて飾ります。断面の美しさと層が奏でる味の変化も魅力のひとつ。毎年、春待つ時期につくりたくなるサラダです。

材料:

ジャガイモ、ハム、ピクルス、卵、チーズ、マヨネーズ、サワークリーム、ヨーグルト、パセリ、ディル

Podvarak(ポドヴァラック) / サワーキャベツの炒め煮

ポドヴァラックは、バルカン半島から中欧にかけて好まれる、千切りの発酵キャベツをスパイスで香りづけして煮込んだ料理。フランスのアルザス地方のシュークルート、ドイツのザワークラウととてもよく似ています(おそらく親戚でしょう)。付け合わせとして、キャベツのみをざくざく食べる場合もありますが、ローリエやニンニクとともにベーコンやソーセージを加えるとテーブルの主役にもなります。材料を炒めたあとにオーブンで焼き、サワーキャベツに甘みと旨味を含めますが、植物油ではなくラードを使うのがお勧め。カロリーもそのぶんリッチになりますが、相性は絶妙です。

材料:

発酵キャベツ、ード、ローリエ、ヴェゲタ、パプリカパウダー、胡椒

Čorbe i Supe / シチューとスープ

Pasulj (パスリ)/ ベーコンと豆のシチュー

旧ユーゴスラヴィア地域で愛される冬の豆料理の代表です。軍隊で大量に大鍋で仕込まれる代表的な料理でもあることから「戦士のスープ」とも呼ばれるそうです。 レシピはシンプル。セルビアには"prosto kao pasulj" 「パスリのように簡単だ」という慣用句があるそうです。宗教的に肉食が禁じられている時期には豆と野菜のみで。たいていはベーコンやハムなどの燻製肉とともに煮込みます。使用する豆は「白ければ何でもいい」。でも、ブチが入っていたり、虎シマのようのも許容範囲らしい。いろいろ試し、現在セルビアンナイトでは「手亡インゲン豆」を使用していますが、ご家庭で手軽に作るには、あらかじめ茹でてある缶詰でもいいと思います。

材料:

豆、ベーコン、スモークソーセージ、ニンジン、パセリ、タマネギ、ニンニク、パプリカパウダー、ローリエ、塩胡椒、植物油またはラード

Begova čorba(ベゴヴァ・チョルバ)/ 牛肉とオクラのシチュー

ベゴヴァチョルバは、ボスニアとヘルツェゴヴィナの伝統的なオクラと鶏肉のスープです。

ベグ(ベゴヴァ)は、「族長」を意味するオスマン帝国時代の地方行政官の称号であり、ふんだんに使われた肉が支配階級の贅沢を象徴しています。これにパンとサラダを加えてメインメニューとすることもできます。

日本では整腸作用と豊富なビタミンで人気のオクラは、精力剤として知られているとか。現地のオクラは日本のものよりもサイズが小さく、乾燥したものを水やレモン水で戻して使用するそうです。

スープの味の土台は、タマネギ、ニンジン、セロリ(現地ではセロリアックの根の部分、日本ではセロリの茎で代用)を炒めたもの。そこにメインとなる肉やローリエなどのハーブを加えて煮込み、仕上げにヨーグルトやレモン果汁を加えてさっぱり仕上げます。

材料:

鶏肉、牛肉、タマネギ、ニンニク、ニンジン、セロリ、パセリ、ディル、オクラ、ローリエ、ヨーグルト、卵、塩、胡椒、レモン果汁、植物油

Svadbarski Kupus(スヴァドバルスキ・クプス) / サワーキャベツのシチュー

Svadbarski kupus(スヴァドバルスキ・クプス)は、文化的な背景の説明ぬきでは語れないセルビア西部(中央セルビアのシュマディヤ地方より西)の代表料理です。

名前の由来は、直訳すると「スヴァドバ=結婚式」「クプス=キャベツ」で「結婚式の(参列者の)キャベツ」。また「結婚式の」という形容詞「スヴァドバル」は10月の古い呼び名ということです。冬の食卓に欠かせないサワーキャベツ(発酵キャベツ)は漬け込みに2か月ほどかかりますが、結婚式の集中する秋に間に合うよう、この料理では7-10日ほどで調理可能になる早漬けタイプが使われるそうです。

田舎の結婚式では参列者が100-200名にもおよび、その胃袋を満たすため、大鍋で材料を終日かけて煮込みます。その鍋の大きさは、子どもがすっぽりおさまるほど。味わいは、キャベツの発酵臭にはじめは驚きますが、本場のアウトドア・クッキングでは漂うその香りも祝いの脇役でしょうか。乳酸発酵の酸味と、煮込みから生まれる野菜本来の甘み、肉の旨味があいまって、時間をかければかけるほど旨味が増す、セルビアン・スローフードの王様です。

材料:

発酵キャベツ、豚肉、ベーコン、タマネギ、ニンジン、ヴェゲタ、パセリ、塩胡椒

Sladak kupus sa mesom(スラダック・クプス・サ・メソム) / キャベツと豚肉の煮込み

この料理は、酸味のある発酵キャベツ(Kiseli Kupus)を使ったスヴァドバルスキ・クプス(Svadbarski Kupusに対し、生のキャベツが使われるため、甘いキャベツ(Slatki kupus)を意味するSladak(スラダック)と呼ばれています。

つくり方もスバドヴァルスキ・クプスと同じように、豚かたまり肉とベーコンと野菜をことこと煮込んで、じっくり味を引き出します。料理の味は完全に異なり、スヴァドバルスキ・クプスは常にベーコンと豚肉を組み合わせて煮込みますが、仔羊や仔牛は決して使用しません。仔羊の肉には独特の味があり、スラダックはそれに適しています。ボリュームがあるので、パンとあわせてメイン料理にもすることも可能なひと皿。時間が料理を美味しくしてる、まさにセルビアらしい煮込みです。

材料:

キャベツ、タマネギ、ニンジン、セロリ、豚肉、ベーコン、塩胡椒、トマトジュース、トマトピューレ、パプリカパウダー、カイエンペパー、パセリ

Riblja čorba(リブリャ・チョルバ) / 魚のシチュー

セルビアのスープには、しゃばしゃばの”ズッパ”、具だくさんの”チョールバ”の2種類があります。このピリ辛スープはセルビア語で「魚のシチュー」という意味で”チョルバ”のほう。

山国のセルビアではありますが、ヨーロッパ10か国を東西に横切るドナウ川の川幅が一番広くなる地域。毎年レシピコンテストも行われるこのメニューは、川魚料理の代表的メニューのひとつです。

使う魚の種類は「なんでもいい」けれど、「1種類だけではなくできれば3種類以上混ぜて、アラを入れたほうが美味しいよ」とのこと。とはいえ、島国の日本では手に入れられる川魚の種類は限られます。試行錯誤の結果、白身のいわゆる「高級魚」よりも青魚のほうがハーブとの相性は良いようです。その時々で手に入る青魚の出汁を生かして仕込んでいます。

材料:

魚、タマネギ、人参、トマト、タラコ、植物油、ワインビネガー、白ワイン、パセリ、ニンニク、ベイリーフ、パプリカパウダーヴェゲタ塩、胡椒

Teleća čorba / 仔牛肉のシチュー

美食の国のセルビアでは当たり前に手に入るけれど、日本では高価な食材を贅沢に使用するため、メニューに載せることを諦めていた料理のひとつがこのシチュー。残念ながらオリジナルレシピの食材である、骨付き仔牛の首筋肉は手に入りませんでしたが、牛のステーキ用肩肉をぶつ切りにして、前日からことこと煮込み。仕上げにヨーグルトと卵で味を整えれば、思わずうなるひと皿です。

材料:

牛肉、植物油、バター、タマネギ、ニンジン、セロリ、ローリエ、ヨーグルト、塩胡椒、小麦粉、卵、パセリ

Gulaš(グーラーシュ) / 牛飼いのシチュー

グーラーシュはハンガリーが発祥の肉と野菜をパプリカ風味で煮込んだ料理です。その歴史は牛飼い料理として9世紀まで遡り、現在では中央ヨーロッパを中心に他の地域でも広く好まれています。地域ごとにバリエーションを持ちセルビアではハンガリーとの国境に近い北部ヴォイヴォディナを中心に、牛や仔牛、豚また猪などの肉と野菜を半々の量で煮込み、パプリカとハーブで味付けで調理するのが主流です。ときにはトマトなどを隠し味に、甘めにすることもあるようです。旧ユーゴスラヴィア全域で食され、戦火のセルビアを、食をめぐるエピソードの聞き書きでつづった山崎佳代子著『パンと野いちご』内でもたびたび登場し、ボスニア出身の元日本代表監督オシム氏の得意料理でもあるそうです。

材料:

牛肉、タマネギ、セロリ、トマト、ニンニク、パプリカパウダー、ローリエ、キャラウェイ、植物油、塩、胡椒

 

Pileći Paprikaš(ピレチ・パプリカシュ) / 鶏肉のパプリカシチュー

 Pileći paprikaš(ピレチ・パプリカシュ)は、ハンガリー発祥で、セルビアでは北部ボイボディナ地方で好まれています。骨付き(←ここ大事!)の鶏肉を、たっぷりの野菜とともに煮込み、骨からにじみでる出汁と野菜の旨みをゆっくり引き出しす滋味あふれるシチューです。セモリナ粉でつくるノクリツェという団子を入れると、sa noklicama(サ・ノクリカマ)がつき、 秋田の「きりたんぽ」や「だまこもち」のような鍋物感も漂います。珍しいけど、懐かしくもある。遠いセルビアに親しみを感じる料理のひとつ。

材料:

鶏肉、タマネギ、ニンジン、セロリ、パプリカ、ジャガイモ、トマトピューレ、ローリエ、ヴェゲタ、パプリカパウダー、塩胡椒、植物油、パセリ、小麦粉、卵、塩

 

Bakalar na brodet(バカラ・ナ・ブロデット) / タラのブロデット

タラのブロデットは、セルビアのお隣クロアチアの料理。タラと野菜、オリーブを重ねてじっくり煮込みます。蓋をして火が通るまでそっと待つ調理法は日本の鍋料理とそっくり。仕上げに加えるハチミツが、あるとないでは大違いのかくし味。

材料:

ジャガイモ、タラ、タマネギ、オリーブ、ニンニク、トマト、ベイリーフ、オリーブオイル、ハチミツ、塩、胡椒

Krem čorba od Celera(クレーム・チョルバ・オド・セルラ) / セロリのクリームスープ

ポタージュといえば、ぱっと思い浮かぶ素材はじゃがいもやコーン、むらさきいも、かぼちゃ、といったところでしょうか。こちらのポタージュの主役は日本人には意外なセロリ。セロリはセルビアのスープやソースの土台となる味と香りを担う野菜のひとつで、「だしの素」的なハーブ調味料"Vegeta"や"Začin C"の香りにも使われています。第二次世界大戦中から没するまで35年間大統領つとめ、旧ユーゴスラビアに最も影響を与え、大食漢で美食家でもあったチトー大統領も好んだスープということです。

セルビアンナイトではリクエストの多い人気メニューで、冬は温かく、夏は濃厚に仕上げて冷製としてお出ししています。

材料:

セロリ、タマネギ、ニンニク、小麦粉、牛乳、バター、サワークリーム、レモン果汁、塩、胡椒

Čorba od Tikvički(チョルバ・オド・ティクヴィツキ) / ズッキーニのクリームスープ

バルカン半島でズッキーニはとても人気の食材です。日本のサイズよりも大振りなため、中をくり抜いて詰め物をしたり、縦にうすくスライスして具を巻き込んだり、横切りにして衣をつけたフライにしたり、様々な調理法で食卓にのぼります。ナスと同じように使われますが、現地ではナスよりも出番が多いそう。こちらのズッキーニのスープは、夏にお勧めのさっぱりとした味わい。皮をむくと白く、皮を残すとグリーンに仕上がります。仕上げたい色と味のバランスで、材料のニンジンとともに加減してみてくださいね。

材料:

ズッキーニ、ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、生姜、ヴェゲタ、バター、塩、胡椒、クリームチーズ、パセリ、オリーブオイル

 

Krem čorba od spanaća(クレム・チョルバ・オド・スパナチャ)/ ほうれん草のクリームスープ

バルカン半島でもほうれん草は人気の食材です。その名脇役はとして欠かせない食材は乳製品。タマネギやニンジン、セロリなど香味野菜とじっくり煮込んだクリームスープにヨーグルトやサワークリームを浮かべてさっぱりいただきます。

材料:

ホウレンソウ、タマネギ、ニンジン、パセリ、セロリ、ニンニク、ジャガイモ、植物油、塩胡椒、ヨーグルト(またはサワークリーム)

Glavna Jela / グリル料理など

Ćevapčići(チェヴァプチチ)| Ćevapi(チェヴァピ) / 肉団子のグリル

トルコ料理のキョフテ(köfte)は、キョフテは、トルコ人のルーツであるタタール人のタルタル(タタール)ステーキがその起源ということです。トルコで「ケバブ」は一般に「焼き肉」指しますが、旧ユーゴスラヴィア地域では、キョフテの基本である、網焼きのウズガラ・キョフテ(Izgara köfte)を”チェヴァピ”または”チェヴァプチッチ”と呼び、タマネギの輪切りや、みじん切りを添えてパンに挟んだものがストリートフードとして人気です。

レシピは地方や宗教、家庭によりさまざまで、イスラム教徒は牛100%、北部の平原地帯では牛・豚の合挽き、山がちの南西部では羊が多く使われます。個々違いを、食べて比べてみるのも楽しみのひとつ。セルビアンナイトでは、牛と豚の合挽肉をスパイシーに仕上げています。

---

【レシピ】

材料:

合挽き肉630g(豚6:牛4)、ニンニク2片、卵白1/2個、重曹、塩、カイエンペッパー、胡椒、各小さじ1/2、パプリカパウダー小さじ1/4

作り方:

材料をすべて合わせ、よく捏ねる。親指ほどの大きさに成形したら、冷蔵庫でしばらく寝かせる(24時間以上熟成させると味に深みが出る)。熱したフライパンに並べ、中心まで(真ん中にピンク色を残さない)しっかり焼く。

 ※脂肪分の少ない赤身の挽き肉を選ぶ。炭火で焼くと、さらに美味いしい。

 

Pljeskavica(プリェスカヴィツア)/ グルメバーガー

「プリェスカヴィツア(Pljeskavica)つくれる?」セルビア料理専門の料理人であるという自己紹介に対し、セルビアのみならず、近隣諸国出身の外国人からよく訊ねられる質問です。忘れ難い郷土の味の上位を占める料理のようです。

一見すると日本でもお馴染みのハンバーグですが、ひと口食べればまったく別モノ。プリェスカヴィツァは、赤身を肉の旨みぎっしりに焼きあげます。しっかりと火を通して歯ごたえもみっちり、腹持ちもばっちり。

タマネギのみじん切りとフライドポテトが定番の付け合わせ。セルビアでは、パンに挟んだプリェスカヴィツァは、チェヴァプチチと並んだ人気のストリートフードです。 また、肉の産地として有名なレスコヴァッツ地方の名物料理です。

セルビアンナイトでは、美味しさを求めて豚と牛の割合や、赤身と脂身のバランス、挽き具合を試行錯誤しています。

材料:

牛肉、豚肉、ニンニク、塩、重曹、胡椒

Karađorđeva šnicla(カラジョルジェヴァ・シュニッツラ) / バルカンスタイルのチーズ入りロールカツ

カラジョルジェヴァ・シュニッツラ”は1959年にチトー大統領の専属料理人であったミロヴァン・ストヤノヴィッチが考案し、セルビア王家のカラジョルジェ家の名をつけた代表的肉料理です。

叩いて薄く伸ばしたヒレ肉を使い、肉の旨味たっぷり。カイマックという乳脂肪のフレッシュチーズやスモークミートを巻き込んで揚げています。

(日本ではカイマックが入手困難なため、ちょっとした工夫をしています)。

材料:

豚肉、チーズ、卵、小麦粉、パン粉、塩、胡椒、植物油

Leskovački Uštipci(レスコヴァツキ・ウシュテイプツィ) / レスコヴァッツ地方の肉だんご

セルビアで一番肉が美味しい地域といわれているレスコヴァツ地方の名のついた肉団子(Uštipci)は、チーズとベーコン入り。銘醸地の名物料理にふさわしく、赤ワインにとてもほくあいます。

材料:

豚肉、牛肉、ベーコン、チーズ、ニンニク、パプリカパウダー、植物油、塩、胡椒

Ćufte u sosu(チュフテ・ウ・ソス)/ バルカンのミートボール

トルコ料理のキョフテ(köfte)は、キョフテは、トルコ人のルーツであるタタール人のタルタル(タタール)ステーキがその起源ということです。その基本は、網焼きのウズガラ・キョフテ(Izgara köfte)で、バルカン地域でĆevapčići(チェヴァプチチ)または Ćevapi(チェヴァピ)として親しまれています。肉団子をトマトソース煮るこのĆufte (チュフテ)は、イズミル・キョフテというイズミル地方の名物料理がバルカン地域に伝わったものでしょうか。どちらも調理法はセルビアのものとほとんど変わりませんが、使用するスパイスの違いが興味深い料理です。

材料:

豚肉、牛肉、タマネギ、ニンニク、パン粉卵、パセリ、トマトジュース、小麦粉、パプリカパウダー、ベイリーフ、ヴェゲタ、塩、胡椒、

Lovacke snicle(ロヴァチュケ・シュニッツレ) / 猟師のビーフステーキ

マスタードと白ワインソースの牛ステーキです。

材料:

牛肉、白ワイン、マスタード、油、小麦粉、レモン、塩、胡椒、ベイリーフ

Piletina u Ajmokcu(ピレティナ・ウ・アィモクツ)/ サワークリームソース風味の鶏肉のグリル

「アィモクツ」というサワークリームの白いソースをかけてじっくり焼いたグリルチキンは、セルビア北部ヴォイヴォディナ地域の伝統料理です。

材料:

鶏肉、ベーコン、サワークリーム、薄力粉、ヴェゲタ、コンソメ、植物油、パセリ、塩、胡椒

Ražnjići od Svinjskog Mesa(ラズニッツィ・オド・スヴィニスコグ・メサ) / 豚の串刺し

セルビアではラズニッチ、ギリシャではスブラキと呼ばれるバルカンで人気の串焼きです。一見何ということのないBBQに見えますが、下味のマリネ液が醸すバルカンの薫り。

セルビアではパプリカパウダーやスパイス、ハーブとともに漬け込み、ビールやきりっと冷えた白ワインが欲しくなり、太陽を感じる一皿です。

材料:

豚肉、パプリカ、トマト、マッシュルーム、タマネギ、ニンニク、ローズマリー、タイム、パセリ、パプリカパウダー

Mesni rolat(メスニ・ロラト) / バルカンスタイルのミートローフ

セルビアのおもてなし料理には、うずまき状に巻き込んだり何層にも重ねて断面の美しさで魅せる技法があります。こちらの肉の”ルーラード”ほうれん草と卵を巻き込んだ人気のお祝い料理です。

材料:

豚肉、ホウレンソウ、ハム、牛乳、タマネギ、卵、チーズ、パン粉、塩、胡椒、ヴェゲタ

Pijana riba iz Smedereva(ピャーナ・リバ・イズ・スメデレヴァ) / スメデレヴォ風魚のロースト

スメデレヴォ(Smederevo)地区は、セルビア屈指の白ワインの銘醸地。ヨーロッパ第2の長さを誇るドナウ川は、ドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)に端を発し、黒海に流れこんでいます。その川幅の一番広い箇所がセルビア。首都ベオグラードでサヴァ川と合流します。

山国のセルビアで魚料理といえば、このドナウ川で獲れる川魚が中心。このメニューは直訳すると「スメデレヴォ風酔っ払い魚」という名の通りワインをたぷっぷり振りかけて焼き上げるドナウ川岸の名物料理です。

現地では鯉やナマズを日本で手に入れるのは難しい。そして、肉と同様、魚も複数を組み合わせるのがセルビア流。白身や赤身、いろいろな組み合わせを試してみましたが、ハーブやレモンに負けないよう、鯵や鯖など青魚を入れるのがお勧めです。

材料:

魚、ジャガイモ、トマト、ワイン、パセリ、ニンニク、オリーブオイル、レモン果汁

Musule na Buzaru(ミュスレ・ナ・ブザル) / アドリア海スタイルのムール貝

”ムール貝のバケツ(型の鍋)蒸し”は、ベルギーのものが有名ですが、アドリア海スタイルは少々趣が異なります。

鍋にオリーブオイルをニンニクで香りづけし、ムール貝を入れたら熟したトマトの水分で蒸し上げます。鍋をゆすってトマトをからめ、少々の白ワインで仕上げ。ふりかけたパン粉が汁気を吸って、それもまた絶品。こちらのほうが好みかも、という意見続出でした。

材料:

ムール貝、トマト、白ワイン、オリーブオイル、レモン、パン粉、ニンニク、パセリ、塩、胡椒

Kuvana Jela / オーブン料理など

Mućkalica(ムチュカリッツァ) / 豚肉のパプリカ煮込み

「振り、かき混ぜ、混ぜる」という意味のムッチカティに由来するメニュー名は、意訳すれば「肉の”ごった煮”」。バーベキューの余り肉を使うことも多く、さまざまな動物の肉と部位の組み合せで複雑な味わいが生まれます。2021年2月に放映されたNHKの番組「今日、うちでなに食べる? 世界のぽっかぽか料理編」でも紹介され、いま日本で一番有名なセルビア料理です。そのレシピは、地方ごとにバリエーションがあり、セルビアンナイトでは、セルビアで一番美味しいお肉を作る町として有名なレスコヴァツ地方のものを採用しています。自家製ベーコンとかたまり肉を鍋でことこと煮込んだのち、オーブンで水分を飛ばして焼きあげます。辛口パプリカパウダーでスパイシーに仕上げた人気の定番料理です。

 ---

【レシピ】

材料:

材料(4人分):豚肉、ベーコン(スライスよりは塊のものがお勧め)あわせて400g、タマネギ1 1/2個、パプリカ2個、トマト(缶詰めも可)250g、ニンニク1片、カイエンペッパー(辛いのが苦手な方はパプリカパウダー)大さじ1/2、ヴェゲタ(ない場合は、材料をしっかり炒めれば可)大さじ1/2、塩、胡椒、植物油、パセリ1/2束

作り方:

ひと口大に切った肉にヴェゲタと刻みパセリをまぶす。タマネギを刻んで塩をふりかえておく。深鍋に角切りにしたベーコンと豚肉の表面に色がつくまで炒めてとりだし、その油でタマネギを透明になるまで炒める。

少量の水を加え、パプリカ、ニンニク、角切りトマトも加えてさらに炒める。水分が蒸発したら肉とベーコンも加え、コップ1杯の水を加えて煮詰める。パプリカパウダー(またはカイエンペッパー)を加えて味見をし、必要ならば塩胡椒して味を調える。

材料を耐熱皿に移し、250℃に余熱したオーブンで表面がパリっとするまで40分ほど焼く。

 

Sarma(サルマ)/ サワーキャベツで巻いたロールキャベツ

"サルマ"はバルカン半島の冬の定番料理。セルビアでは、このロールキャベツが上手にできようになると「сада се можеш удати(これでお嫁にいけるね」」と言うそうです。

地域や家庭によりさまざまなレシピがありますが、日本の一般的なレシピとの違いは、材料にキャベツに丸ごと発酵させたキャベツ(Kiseli Kupus)を使うことと、味付けにパプリカを使うこと、肉のつなぎがパン粉ではなく米であること、ひと口サイズであることなど。セルビアのバリエーションでも、調理方法は炒める油が植物性だったり、ラードだったり。肉を生のまま包んだり、炒めてからだったり。鍋で煮るやり方、オーブンで焼くやり方、煮てから焼くやり方、などなど、手をかけようと思えばいくらでもかけられる料理です。

キャベツは塩漬けにより水分が抜け、繊維が柔らかくなっているため下茹での必要はありません。加熱で引き出される甘みと、乳酸発酵による酸味をあわせもつキャベツが、肉と、その旨味を吸い込んで柔らかくなった米を包み込み、滋味あふれる一品です。

材料:

発酵キャベツ、タマネギ、豚肉、牛肉、米、卵、ベーコン、パプリカパウダー、ニンニク、ベイリーフ、植物油、塩、胡椒

Punjene Parprike(プニェネ・パプリケ) / パプリカの肉詰め

Punjene Parprike(プニェネ・パプリケ)は、「パプリカの詰め物」という意味のセルビア/クロアチア語です。ピーマンの肉詰め料理は世界の多くの地域で見られますが、バルカン半島では熟したパプリカを用います。

種をくり抜き丸ごと一つの空洞みちみちに肉を詰め込み、ボリューム満点!柔らかくなるまで煮込んだパプリカを、オーブンで焼きあげ、うまうま。マッシュポテトを付け合わせに召し上がれ。

 

材料:

豚肉、牛肉、パプリカ、米、タマネギ、ニンニク、パプリカパウダー、塩、胡椒

Sogan Dolma(ソガン・ドルマ) / タマネギの肉詰め

「ドルマ」は、トルコ語で「詰める」という意味で、さまざまな野菜に挽き肉を詰めるオスマン帝国発祥の調理法です。Sogan Dolma(ソガン・ドルマ)は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの都市、モスタルの名物です。「タマネギの詰め物」という名のとおり、丸ごと茹でて柔らかくしたタマネギをくり抜き、肉を詰めて蒸し焼きにした料理です。合挽肉をパプリカで風味づけをすることの多いセルビア地方に対し、ボスニア地方では、牛挽き肉、トマト風味が多くみられ、オスマン帝国文化の影響の強さを、食の面でも感じます。

材料:

タマネギ、牛肉、米、卵、トマトペースト、パプリカパウダー、植物油、塩胡椒、レモン果汁、パセリ、サワークリーム

Musaka(ムサカ) / ジャガイモと挽肉の重ね焼き

セルビアのムサカは、まさに「おふくろの味」。トルコが発祥のムサカは、(おそらく)ギリシャ経由でセルビア地方に伝わったと考えられています。本家トルコでは、ナスと挽肉の重ね焼きですが、セルビアではジャガイモと挽肉を重ねるのが定番。家庭ごとにバリエーションがみられ、ズッキーニやナス、米を使うこともあるようです。イタリアのラザニアにも似ていますがチーズは載せず、タマゴでとじています。

材料:

ジャガイモ、タマネギ、パプリカ、ニンニク、豚肉、牛肉、卵、牛乳、パセリ、ヴェゲタ、パプリカパウダー、植物油、塩、胡椒

1 2 3 4 5 6 7