food&wine/料理とお酒

【Gastronomija Srbije / セルビアの食文化】

セルビア料理の特徴

 

"Every best things come from Home Made" 

バルカン半島は、最初で最後のヨーロッパ。日本人があまり訪れることのない、知られざる美食地帯。セルビア共和国は、東西ローマ帝国、オスマン帝国の支配、ハプスブルク家の占領と影響を受けた東西文化の交差点である。この地域では、オスマン帝国の発展とともに東西の食文化が交わり、宮廷料理が完成したといわれている。

トプカプ宮殿の厨房で調理にあたったのは、デヴシルメ制度で税として徴用した帝国内のキリスト教徒の少年たちから選抜された者であった。イェニチェリ(少数精鋭のスルタンの近衛兵)として改宗し、後年は軍人や高官となる彼らもそのスタートは外廷のコックであり、そこから輩出された帝国のエリートたちが、さまざまな形で宮廷の洗練された料理を全土に広めていった。また、帝国の崩壊後に職をうしなった宮廷料理人たちの帰郷は、手の込んだ郷土料理の発達をさらにうながした。

首都ベオグラードは欧州最古の街のひとつ。フランスのボルドー地方や北海道と同じ北緯44度に位置し、料理は主に東側から。酒は主に西側からの影響を受け、その魅力的な融合がバルカンの食文化を形作っている。宗教上肉食を禁じる期間があるため、豆や野菜、乳製品を使ったメニューも多い。食卓を囲んだそれぞれが大皿料理を取り分けるスタイルは、日本の昔ながらのおもてなし料理にも通じ、はじめて口にしてもどこか懐かしさが感じられる食べ物が多い。

豊かな農業国

バルカン半島は豊かな環境に恵まれ、中央ヨーロッパの主要な農業地域となっている。北の平原は大陸性気候、南部は地中海性気候と地域ごとに特徴が異なる。国土の大部分は古代パンノニア海の海底であったため、海洋堆積物が堆積した肥沃な土壌が広がっている。(詳細は:セルビアのテロワール(気候・風土・土壌) へ)

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郷土料理は、地場の素材を活かした大家族むけが主流。養豚はセルビアの主要産業のひとつであり、ナラなどの雑木に恵まれたシュマディヤ平野では19世紀以来豚の飼育が盛んである。1804年にオスマン帝国に対し蜂起したカラジョルジェことジョルジェ・ペトロヴィッチ(Karađorđe Petrović)も豚商人であった。放牧で育てられた家畜の肉は、赤身が強く味が濃い。屠畜、解体も自家で行うこともあり、店頭でも枝や塊の状態で販売される。山国のため、魚はドナウ川の川魚が主である。

また、セルビアを語るうえで欠かせない食べ物のひとつがパプリカ。ローストパプリカをペーストにしたアイヴァル(Ajvar)、フルーツブランデーのラキヤ(Rakija)、天使のようでもあり悪魔的に美味なる乳製品カイマック(Kajmak)とならび、セルビアの食卓における三種の神器といえる。

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秋には冬に備えた保存食(Zimnica)づくりが行われ、おしなべて最上のものは自家製(domaća)であり、市販品に勝るとされている。パプリカペーストのアイヴァル(Ajvar)やキャベツの漬物のキセリクプス(Kiseli Kupus)、地酒のラキヤ(Rakija)などがその代表である。

  

オスマン帝国の影響

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食肉の種類は宗教による影響を受け、全域で豚肉が好まれる。オスマン帝国の影響を強く受け、山がちの南西部では羊肉も好まれ、北部の平原では牛肉も多く使われる。

パンやチーズ、コーヒー(Domaća kafa)、菓子類もトルコ発祥のものが多くみられる。ピタパンのレピニャ(Lepnja)、白いチーズのシレネ(Sirene)、カイマック(Kajmak)、ブレク(Burek)やロクム(Ratluk)などがその代表である。

調理方法は炭焼き系と煮込み系に大別される。

 

●炭火焼き系

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ハレの日のご馳走が多く、一家の長である男性が携わる場合が多い。素材そのものの味が異なるため、日本での丸焼き系の味の再現は難しい。(チェヴァプチッチ(Ćevapčići)やプリェスカヴィツァ(Pljeskavica)など、挽き肉のグリルも人気。

 

●煮込み系

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手間ひまのかかる郷土料理は、レストランなどで提供されることはすくなく、伝統的な「おふくろの味」として親しまれている。葉に包んだ肉、野菜をくり抜いた肉詰め、ぶつ切り肉や豆などを大量に調理し、長時間煮込む。代表的な料理は、スヴァドバルスキ・クプス(Svadbarski Kupus)、プニェネ・パプリケ(Punjene Parprike)、ドルマ(Dorma)、ジュヴェチ(đuveč)など。

 

セルビアのカイマック(kajmak)について

カイマック(kajmak)は牛乳(または水牛、羊、山羊の乳)の分離したクリームの膜からつくられた、天使のような悪魔のような発酵クリーム。セルビア語で「カイマックをさらう」といえば、「美味しいところだけ取る」という意味だそう。

「イギリスのクロテッドクリームに似ているけれど、その100倍美味しい」と評する友人も。脂肪分が高く、通常は約60%ほど。濃厚でクリーミー。豊かな味わいを持つ。

語源は中央アジアのテュルク語に由来。中央アジアからバルカン諸国にかけ、コーカサス、トルコ、中東地域などで食されている。セルビアでは大量生産品も市販されているが、上質なものは自家製である。主な名産地は、クラリェボ(​​Kraljevo)、ウジツェ(Užice)など。クラリェボ(​​Kraljevo)、最高品質のカイマックを求める人々が毎週金曜日のマーケットに集まる。

2015年に参加した牧場でのワークショップでは、放牧ジャージー牛の初乳が使われた。フレッシュ・カイマックも、数日間熟成させたカイマックも、どちらも絶品の忘れられない味。以下は、ワークショップで撮影した写真でたどる、カイマックの製造方法。

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訪れたのは、ベオグラードから車で4時間ほど南下したゴリア山地にある農園。一帯は2001年に生物圏自然保護地域として登録されており、緯度は青森県と同程度。標高は最も高いJankov Kamen山が 1,833m。見渡す限の広大な農園で、遠くに見える点が放牧している牛たち。鶏舎も平飼い。養蜂の巣箱も。

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出迎えてくれたのは名人のMica(ミカ)さん。お宅を訪問すると何はともあれまず「お茶っ子」でよもやま話がはじまるのは、日本の田舎と同じ。豊かな農村風景は黄金色に揺れるトウモロコシを稲穂に、積まれた麦藁をはざ掛けに置き換えれば遠野や花巻と重なり、岩手の農園でこちらの写真を見せても「このへんの写真じゃないの?」とデジャヴを感じた返答を受けたのは余談。

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お待ちかねのKajmak(カイマック)づくり体験。原材料は出産したばかりの母牛の初乳と塩のみ。日中は放牧している牛たちが日没後に牛舎に戻り、仔牛のお腹がいっぱいになると人間の番。ミカさんが翌日の分を搾乳。

50ℓの牛乳で800gのカイマックができる。絞った牛乳をひと晩置き、脂肪分が分離して浮かんでくるまでそのままにしておく。

2015-09-22 171.jpg2015-09-22 172.jpgカイマック(kamak)について

分離した牛乳がはいった鍋を火にかけ、脂肪分が湯葉のような膜になるまで加熱する。膜がはったら火を止めて冷ます。牛乳が覚めたらナイフで丁寧に鍋肌から膜をはがし、そっとまとめて

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脂肪膜を抑えて下の液体を別の容器に移す。(脂肪膜をすくいとった後の牛乳には、別途レンネットを加えてチーズをつくる。)

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とりわけた脂肪膜を密封容器に移し、塩をふって3-4日冷蔵庫で熟成させる。 

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こちらは既に2-3日発酵させてあるフレッシュカイマックの試食。アイスクリームのように、ころころと盛り付け。

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肉やケーキ、食卓のあらゆるものとカイマックの組み合わせを試し、個人的には、パンと蜂蜜、カイマックのコンビネーションがツボ。(セルビア人には邪道だと言われますが・笑)

セルビアの養蜂と蜂蜜(Srpski med)について

バルカン半島は古代ギリシャ、ローマ文化の発祥の地であるとともに、現在ユーロに加盟していない国もあることから「最初で最後のヨーロッパ」ともいわれている。蜂蜜は地域を象徴する食材のひとつ。穏やかな大陸性気候や豊かな植物群のおかげで、高品質の蜂蜜を生産するための環境が整っている。古代ギリシャでは蜂蜜は雲から到来すると考えられ、不死を約束してくれる神々の食べものと考えられていた。また、ローマ人は蜂蜜を「天国で生まれた空気の贈り物」と考え、神への捧げものとした。ギリシャ語では蜂蜜をmelisと言い、古代ローマで話されていたラテン語のmelは蜂蜜にまつわる様々な語源となっている。メリッサという女性名も蜂蜜を意味する言葉から来ている。

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キリスト教では主は人類を照らす「光」。祈りの場にはその象徴であるロウソの灯りが不可欠である。修道院ではロウソクの原料である蜜蝋を得るために養蜂を行い、蜂蜜や蜜蝋は甘味料、添加物、自然療法の治療薬、防腐処理にも使われた。6世紀と9世紀の間、バルカン半島に定住したスラヴ人にとって主要な農業活動であった養蜂は、修道院や教会が普及に大きな役割を果たした。養蜂は非常に尊敬される職業となり、領主の館や地所には不可欠な技術とみなされ、中世には王族の中にも広がった。 セルビアでは9世紀にキリスト教に改宗後、19世紀まで養蜂は修道士(のちには教員も)が携わる仕事であった。カトリック教会はミツバチと養蜂家の守護聖人として聖ヴァレンツィヌス(バレンタイン)を認定。4世紀にミラノ司教を務めた聖アンブロジウスも養蜂家、ミツバチ、ロウソク職人の守護聖人である。

1920年度以降は国家が養蜂を推進し、1962年の社会主義体制後、産業が飛躍的に発展した。1998-1999年のコソボ紛争が原因で国境地帯の農業が崩壊した際には、地雷の撤去作業が完了するまでの間、養蜂は酪農や耕作に比べ迅速な利益をもたらし、より安全な代役を果たした。(写真1枚目はベオグラード、サヴァ教会にて。入り口付近にある台がふたつの台にロウソクを灯す。高いほうは生きている人のため、低いほうは亡くなった方のため。)

【blog】セルビアのラキヤについて Srbska Rakija を追加しました20171216231638.jpg

ミード(mead)は蜂蜜が発酵した酒で、人類最古のアルコール飲料であろうと言われてる。古来語のmeoduを語源とし、バルカン半島でも古代から親しまれ、世界各地で飲まれている。 修道院では聖体礼儀のためのワインとともにミードを醸造し、収入を得る糧ともなった。

また、セルビアの代表的な地酒ラキヤ(rakija)にも、はちみつを使用したものがある。蜜蝋で封印された瓶もよく見うけられ、現在も生活のさまざまな場面で養蜂の産物が余すところなく利用されている (日本の鮫や鯨に捨てるところなしと言いますが、それに通じるものを感じる)。 

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2012年現在、セルビアでは31,000人の養蜂家が年間約6、865トンの蜂蜜を生産している。そのうちプロの養蜂家は266件で、94.7%が家庭内での事業である。2015年に訪問したセルビアの農園でも牛の放牧、養鶏とともに養蜂に従事していた。ゆずっていただいた蜂蜜の美味しかったこと!!

グリーンマーケットで野菜や果物、蜂蜜の瓶に群がっているのは蜂。屋外の食事でワインの甘い香りに誘われてくるのも蜂。いちいち怖がっていたら身が持たないうえ、バルカン半島に生息するカーニオラン種の蜂は大人しく、手で払いのけられるので親しみさえ覚る。黒い瞳と灰色の縞模様が印象的。現地ではカルニカと呼ばれ、スロヴェニア(旧ユーゴ)が原産。のんびりゆっくりと飛ぶ姿は、喩えて言えば、血を吸い過ぎて重たくなり過ぎた蚊のようであった(日本の養蜂の主流はイタリア原産の「西洋ミツバチ」であるが、一部ではカーニオランの女王蜂も輸入されている) 

【Gastronomija Srbije / セルビアの食文化】セルビアの蜂蜜について を追加しました20160919_075322837.jpg

蜂蜜はスーパーマーケットでも販売されているが、人々は信頼できる養蜂家から直接を買う傾向がある。さまざまな花から採集された蜂蜜、巣入りのコムハニー、花粉、プロポリス、薬効をうたったものなど、さまざまな製品が売り場に並んでいる。 なかでも人気はヒマワリ蜜である(オンラインショップでも販売)。

カメノボ(Kamenovo)村では毎年4月にバルカン地域から、何百人もの養蜂家を集める伝統的な2日間のフェアが行わる。小さな村ながら4千以上の蜜蜂の巣箱があるため、「蜂の巣村」として知られており、ほかにも各地ではちみつフェアは開催されている。また、ホモリェ山脈(Homolje)で生産されるホモリェ蜂蜜(Homoljski med)は特に有名で、フルシュカ・ゴーラの菩提樹蜂蜜(Fruškogorski lipov med)、ジェルダップの蜂蜜 (Đerdapski medカチェルの蜂蜜(Kačerski medとともに、欧州連合(EU)が定める原産地名称保護の対象にもなっている。

 

参考書籍、参考サイト

『ハチミツの歴史 (「食」の図書館)』作者: ルーシー・M.ロング,大山晶

REPUBLIC OF SERBIA MInistory of Agricalture, Forestory and Water Managemtent.

Bee Keeping in the Balkans

Zimnica / 保存食

Ajvar(アイバル) / パプリカペースト

アイバル(Ajvar)は、ヨーロッパで「セルビアの(畑の)キャビア」とも呼ばれ、食卓に欠かせないアイテムです。中東から東欧、西アフリカまで、地方ごとに名前も味もさまざまなに、野菜スプレッドのバリエーションがありますが、共通するのはパプリカやナスやトマトをベースにみじんぎりにして油とあわせて煮込むこと。旧ユーゴスラヴィア圏で愛されるアイバルの特徴は「しっかりパプリカをメインで味わう」レシピ。レスコヴァッツ地方のアイバルは欧州連合(EU)が定める原産地名称保護の対象にもなっています。近郊のドニャ・ロコシュニカ(Donja Lokošnica)村は、パプリカの都。人口1,300人約280世帯のうち、250家族がパプリカの栽培に従事し、秋の初めは村全体の軒先に吊るされた約150,000本の乾燥パプリカのリースで赤く染まります。セルビアでは、各家庭で冬の間の>保存食(Zimnica)として仕込む伝統がありますが、近年では瓶詰が手軽に入手できるようになり、都市部ではあまり行われなくなっているそうです。

【online shop】セルビア産アイバル入荷のお知らせ

そのままサラダとして。また、クラッカーに載せてオードヴルに。パンに塗って。肉に卵に魚介に添えてソースに。料理に加えて調味料の役割も果たし、主役にも脇役にもなるスーパースター。セルビア産アイバルは、オンラインショップでお買い求めいただけます(オリジナル味)(スパイシー味)。 

原材料名:赤パプリカ、サンフラワーオイル、塩、酢、香辛料

Turšija(トゥーシャ) / ピクルス

中東からバルカン半島にかけて食べられる”トゥーシャ”(トルコ語はTurşu)は、日本の輸入食材店で手にするアメリカや西欧のピクルスと、少し風味が異なります。塩と酢にニンニクやホールスパイス、ハーブを効かせて野菜を漬け込みます。ディルの甘い香りがアクセント。

材料:

ワインビネガーl、塩、砂糖、ディル、マスタードシード、胡椒、コリアンダー、ベイリーフ、ニンニク、野菜はキュウリ、人参、カリフラワー、キャベツなど

Kiseli Kupus(キセリ・クプス)/ 発酵キャベツ

”キセリ・クプス”はバルカン半島でキャベツの収穫期である夏の終わりから秋にかけてにつくられる保存食です。そのままサラダとしても食されますが、披露宴の定番であるスヴァドバルスキ・クプス(Svadbarski kupus)、ロールキャベツのサルマ(Sarma)ポドヴァラック(Podvarak)などにも使われ、冬の味覚の代表的な食材です。

大ぶりの樽型の容器に丸ごとのキャベツと塩で漬け込み、キャベツが持つ糖分の乳酸発酵を利用するため、千切りを酢漬けするドイツのザワークラウトとは似て非なる食品です。使用するキャベツは葉が薄く、固く結球する品種が適しています。

作り方:

キャベツの芯をくり抜き、空洞部分にキャベツの重さの3-6%の塩をつめ、まわりにもまぶします。漬物容器にできるだけ密にになるよう詰め込み、ぬるま湯をひたひたになるよう注ぎます。キャベツが空気に触れないよう重石をし、時々ゆすって塩水をいきわたらせます。3週間ほどでキャベツ全体がやわらかく、ぺしゃんこになれば完成。2-3カ月頃が食べごろです。

※必ず日中の最高気温が18℃になってから漬け込むこと。それよりも気温が高い場合や、塩分濃度が低すぎると腐敗の原因になります。

材料:

キャベツ、塩

Domaća Slanina / 自家製ベーコン

Jetrena Pašteta / レバーペースト

švapski sir / カッテージチーズ

Predjela / 前菜

Urnebes salata(ウルネベス・サラータ)/ パプリカ風味の白チーズ

ウルネベスは、セルビア南部の典型的な付け合わせであり、ほとんどの場合はグリルをはじめとした肉料理に添えられます。

ホワイトチーズと塩や唐辛子などのスパイスから作られ、パプリカパウダーの色が赤く色づきます。辛さは加えられるパプリカパウダーのタイプによって異なり、にんにくがあることもあります。

材料:

チーズ、植物油、ニンニク、塩、カイエンペパー、パプリカパウダー 

Humus(フムス)/ ヒヨコ豆のペースト

中東料理のフムスは、バルカン半島でも人気の前菜です。伝統的なアラブのレシピにパプリカパウダーを加えて、セルビア風に。

材料:

ひよこ豆、ごまペースト、ニンニク、レモン果汁、オリーブオイル、クミン、パプリカパウダー、塩、胡椒

 

 

Grčka Fava(グルシュカ・ファーヴァ) / ギリシャスタイルの豆のペースト

トルコ発祥の前菜(Meze)の定番、豆のペースト(Fava)をギリシャのレシピで。

材料:

えんどう豆、塩、胡椒、オリーブオイル、タマネギ、レモン果汁

Hleb / パン

Lepinja(レピニャ) / ピタパン

”レピニャ”は粉と牛乳、水にイースト、塩を加えてつくるシンプルなピタパン。インドからアドリア海までの広大な地域で愛されている、日本でいえば「白飯」のような役割の平たいパンです。

しっかり小麦の風味が感じられ、ついつい食べ過ぎてしまいます。現地の標準的なサイズは、ちょっとしたクッションか、飛行機の枕くらいあるかなりの大きさのため、セルビアンナイトではハーフサイズで焼いています。

材料: 

小麦粉、ライ麦粉、牛乳、イースト、塩、砂糖

Proja(プロヤ) / コーンブレッド

"プロヤ"と呼ばれるコーンブレッドは、セルビアの代表的な郷土料理です。チーズ入りのしっかりした塩味で腹持ちが良く、伝統的に羊飼いの朝食として食べられていたそうです。形からは甘いお菓子を想像しますが、お酒にもあうね、と必ず言われる人気者です。

日本では米が育たない地域でそば粉を栽培していたように、セルビアでは小麦の代用としてトウモロコシを育て、コーンブレッドは貧しい人の食べものとされていたそうです。それもいまは昔。現在では特別な友人に配るものと位置づけられ、2018年1月に安倍首相がセルビアを初訪問した際の晩餐会でもメニューに供されたという逸話も。

材料:

小麦粉、コーンフラワー、チーズ、卵、牛乳、植物油、ベーキングパウダー

Pogača(ポガチャ) / 竈(かまど)パン

"ポガチャ"は、トルコ発祥のふんわりとした生地のパン(トルコ語=Poğaça、セルビア語=Pogača)。名前の意味は「丸いパン」。粉と水がメインのレピニャに対し、卵を加えたリッチな配合が特徴です。日常の食卓にはシンプルで大振りな形のパンを焼きますが、クリスマス、イースターや「スラヴァ(守護聖人の祝日)」などの「ハレ」の日には、小麦粉でさまざまな象徴的モチーフの装飾を施されます。結婚式では、一家の繁栄の象徴として花嫁が抱え、参列者が新郎新婦にライスシャワーならぬ塩のシャワーをふりまきます。

材料:

小麦粉、牛乳、植物油、ヨーグルト、卵、イースト、塩、砂糖

Slavski kolač(スラヴスキ・コラチ) / 守護聖人の日の祝いパン

セルビアでは各街や家庭やごとに父系で受け継がれる守護聖人を持ち、正教徒はその記念日を祝います。ユネスコ無形文化遺産にも登録され、12月19日の聖二コラウス、5月6日の聖ゲオルギオス、1月20日の洗礼者ヨハネ、1月27日の聖サヴァなどが多く祝われているそうです。

教会での儀式のために焼かれる”スラヴスキ・コラチ”はキセルビア語でスラヴァケーキを意味し、神にささげる犠牲の象徴です。キリストのシンボルである十字と聖人に関係のあるシンボル(ハトやバラ、本など)を飾るのが常です。食卓には聖人のイコン、スラヴスキコラチが並び、主の象徴であるロウソクの灯りがコリヴォまたはジト(žitoと呼ばれる小麦のペーストに立てられます。どことなく日本のお盆に通じるものを感じませんか?わたしは日本人で守護聖人を持たないため、セルビアの修道院で記念にいただいたイコンを飾ります。

 参考記事:守護聖人を祝うSlava(スラヴァ)の儀式

材料:

小麦粉、牛乳、植物油、ヨーグルト、卵、イースト、塩、砂糖、ゼラチン

Božićna Česnica(ボヅィツィナ・チェスニッツア) / クリスマスのパン

セルビア正教会では、ローマ皇帝カエサルにより紀元前45年に定められたユリウス暦に則り祝日を祝います。1年のはじまりはグレゴリオ暦より2週間遅れの1月14日。クリスマスはセルビア語でBožić(ボジッチ)といい、1月7日がその日にあたります。前日の6日は祝いの準備が行われ、この日まで肉、卵、乳製品が禁じられた禊の期間です。クリスマス当日には豚の丸焼きなどのご馳走を用意し、早朝の夜明け前に特別に焼いたČesnica(チェスニッツア)というパンに、教会で祝福を受けます。

チェスニッツァは、クリスマスの重要な象徴のひとつであり、「共有」を意味する古い単語「čest」にちなんでその名前が付けられました。地域ごとに異なるレシピがあり、幸福と健康のさまざまなシンボルや、キリストのモノグラムで飾られています。帰宅後、テーブルを囲んだ家族や親族でチェスニッツァに手を差し伸べてつかみ、三周回したのち一斉に引きちぎって中に焼き込んだコインを誰が引き当てるかで一年の幸運を占います。

材料:

小麦粉、牛乳、卵、オリーブオイル、イースト、砂糖、塩

Pogacice(ポガチッツェ) / スコーン

セルビアのスコーンは、強力粉とバター、牛乳などでつくります。イーストで軽く発酵させてかりっと焼き上げ、ヨーグルトやクロテッドクリームとあわせるそうです。

材料:

小麦粉、牛乳、クロテッドクリームまたはチーズ、バター、卵、イースト、砂糖、塩、ゴマ

Kiflice(キフリツェ) / プチロール

キフリツェというセルビアのひと口サイズのパン。ミニクロワッサンとよく似た見た目とサイズですが、ヨーグルト、サワークリーム、植物油でさっくりとした食感。セルビアンナイトでは、黒ゴマはベーコン入り、白ごまはカッテージチーズ入りが定番。小さいけれど食べごたえのあるスナックです。

材料:

小麦粉、牛乳、植物油、ヨーグルト、サワークリーム、イースト、卵、バター、砂糖、塩、ベーキングパウダー、ゴマ、具はチーズやベーコンなど

Salate / サラダ

Pečene Paprike(ペチェネ・パプリケ) / ローストパプリカのマリネ

ローストパプリカのマリネ「ペチェネ・パプリケ」。これぞセルビア!というひと皿です。「ペチェナ・パプリカ」とも言いますが、語尾がaで終わる場合は、単数形。eで終わるのが複数形で、料理名の場合は、どちらでもいいそうです。

セルビア料理をはじめたころは、なかなか手に入らなかったパプリカも、昨年あたりから値段も手ごろになってきたので登場回数が増えました。彩の名脇役として登場することの多く、そのものをしっかり味わうことの少ない野菜ですが、主役になると抜群の旨味を堪能できます。焼きナスの要領で焼いて皮をむき、調味料で和えて味をなじませればOK。とろりとした食感が癖になります。

材料:

パプリカ、植物油、ワンビネガー、ニンニク、塩、胡椒

Paprika sa sirom(パプリカ・サ・シロム) / パプリカのチーズ詰め

パプリカにチーズを詰めて焼くだけなのに、なんて美味しい!そのヒミツは、チーズに加えるひと手間。カッテージチーズやFetaなどの白いチーズをほぐし、卵とスパイスを加えて風味を足します。このチーズミックスは、パイやパン生地に詰めても、ほっぺが落ちる万能の具材❣️ 出来たての熱々で、冷たくしても、どちらもお勧めのひと皿です。

材料:

パプリカ、チーズ、卵、パセリ、ヴェゲタ、植物油

 

Šopska salata(ショプスカ・サラータ) / ショプ地方のサラダ

ショプスカサラータは、ブルガリア、セルビア、マケドニアにまたがる「ショプ地方のサラダ」という名前のサラダです。山がちなその地方では、山岳牧畜民が多く暮らしているため「羊飼いのサラダ」というニュアンスも含み、特徴は、角切りした野菜にシレネという、山羊や羊のチーズをたっぷりと振りかけること。

1960年代にブルガリアの旅行キャンペーンのために考案されたレシピが、バルカン半島全域に広まったということです。地域やシチュエーションにより、レシピに若干の差がみられますが、コツはおおらかに作ること。タマネギやキュウリを水にさらさない、トマトの種のまわりのぬめりを残す。野菜の持つ汁気が、ドレッシングにセルビアらしい風味を与えます

材料:

パプリカ、トマト、タマネギ、キュウリ、チーズ、植物油、レモン果汁、塩、胡椒、唐辛子

Srpska Salata(スルプスカ・サラータ) / セルビアのサラダ

"スルプスカサラータ”はパプリカ、キュウリ、トマト、タマネギを刻んでドレッシングで和えた"ショプスカ・サラータ"のシレネチーズなしバージョン。セルビア/クロアチア語で「セルビアのサラダ」という意味の名前で、トルコの「羊飼いのサラダ=チョバン・サラタス(Çoban Salatas)」とほぼ同じ料理です。

セルビアのドレッシングはヒマワリ油とワインビネガー、塩胡椒にニンニクに風味づけをするのが一般的ですが、土地や家ごとにそれぞれ違ったレシピもあり、アップルビネガーを使う場合や、お隣のクロアチアではオリーブオイルが主流です。

材料:

パプリカ、トマト、タマネギ、キュウリ、植物油、レモン果汁、塩、胡椒、唐辛子

Ruska salata(ルスカ・サラータ) / ロシア風サラダ

”ルスカ・サラータ”は、セルビア/クロアチア語で「ロシア風のサラダ」という意味の名前ですが、ロシアのよく似た料理ははオリヴィエ・サラダと呼ばれているそうです。呼び名の由来は、ロシア人=マヨネーズが大好き、というイメージからきているのでしょうか。ジャガイモとニンジンに加えて、ハムとピクルスも欠かせない具材です。

材料:

ジャガイモ、ニンジン、ハム、ピクルス、グリンピース、マヨネーズ、サワークリーム、レモン果汁

 

Francuska Salata(フランツスカ・サラータ) / フランス風サラダ

セルビアの宴席には、たっぷりの緑黄色野菜を美しく盛り合わせたポテトサラダが定番です。フランス風サラダという意味のフランツカ・サラータは、ハムが欠かせないルスカ・サラータ(ロシア風)に対し、ハム抜き胡桃入りが特徴です。リンゴを入れることもあるそうです。なぜフランス=胡桃なのかは、おそらくセルビア人がフランスに対して抱いているイメージによるものだと思われますが、調査中。なかなかその謎が解けません。

ちなみに、ルスカ・サラータの本家、ロシアでは、マヨネーズを用いるポテトサラダ(オリビエ・サラダ)は、フランス料理の影響を受けて生まれたということです。興味深いですね。

材料:

ジャガイモ、ニンジン、キュウリ、卵、グリンピース、胡桃、マヨネーズ、サワークリーム、マスタード、レモン果汁、塩、胡椒

 

Tarator Salata(タラトル・サラータ) / ヨーグルトとキュウリのサラダ

「タラトル」は、オスマン軍発祥の料理です。ヨーグルトにニンニク、キュウリなどを加えた「ジャジュク(Cacik)」のセルビア版。”タラトル”と呼ばれ、刻んだ胡桃も入ります。水気を切らずに冷たいスープとして。水気を切ってサラダ風に、どちらもさっぱりとした副菜として肉料理との相性が抜群です。

材料:

ヨーグルト、キュウリ、ニンニク、胡桃、オリーブオイル

Grčki Tzatziki(ザジキ) / ギリシャスタイルのヨーグルトとキュウリのペースト

トルコ発祥のヨーグルトにニンニク、キュウリなどを加えた前菜”ジャージュク(Cacik )”は、バルカン地域でも好んで食されます。ギリシャではザジキと呼ばれ、ディルを入れるのが特徴。ヨーグルトの水分も少なめで、それぞれの国の美妙な違いが興味深い料理です。

材料:

ヨーグルト、キュウリ、ニンニク、ディル、オリーブオイル、酢

Paradajz salata(パラダイズ・サラータ) / トマトサラダ

2015年のセルビアクッキングツアーで食事のたびに「パプリカ、パラダイス」という言葉を聞き、そうか、セルビアはパプリカがたくさん獲れるから「パプリカ天国」と自慢しているんだな、と解釈していたら大間違い。パプリカのローストとともに、行く先々で出されたこのサラダが「パラダイス・サラータ」。パラダイスはトマトを意味するセルビア語だったのです(笑)

グリーンサラダと並んで、このトマトサラダも「どうやって味をつけたの?」と尋ねられることの多い料理です。ワインヴィネガーとオリーブオイル、塩胡椒だけの簡単な味付けですが、その勘どころはおそらくトマトの種のまわりのちゅるちゅるした部分と、水にさらさない、辛いままのタマネギからくる風味でしょうか。

材料:

トマト、タマネギ、パセリ、ワインヴィネガー、オリーブオイル、塩、胡椒

Zelena salata(ゼレナ・サラータ) / グリーンサラダ

付け合わせは、なかなか来店同機にはなりませんが、実際にお食事をされると、メインディッシュよりも感激されることが、ままあります。なかでも、サラダはセルビア人に「なにこれーっ!セルビアの味がする!!どうやって再現したのー?」と質問されることが多いサイドメニュー。その秘密はドレッシング。市販のものを使わず、その都度調味料をあわせて、直前に和えています。

材料:

レタス、ラディッシュ、ワケギ、オリーブ、レモン果汁、オリーブオイル、塩、胡椒

Salata od Šargarepe(サラータ・オド・サルガレペ) / ニンジンサラダ

このサラダは「セルビアで食べた味が再現できるレシピを見つけたよ」と、友人からレシピを教えてもらったもの。ドレッシングの材料のうち、オリーブオイルオイルを加熱してテンパリングするのがポイントです。

材料:

ニンジン、ニンニク、パセリ、クミン、オリーブオイル、レモン果汁、塩、砂糖

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