food&wine/料理とお酒
Lepinja(レピニャ) / ピタパン
”レピニャ”は粉と牛乳、水にイースト、塩を加えてつくるシンプルなピタパン。インドからアドリア海までの広大な地域で愛されている、日本でいえば「白飯」のような役割の平たいパンです。
しっかり小麦の風味が感じられ、ついつい食べ過ぎてしまいます。現地の標準的なサイズは、ちょっとしたクッションか、飛行機の枕くらいあるかなりの大きさのため、セルビアンナイトではハーフサイズで焼いています。
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【レシピ(4個分/ハーフサイズで8個)】
材料:
強力粉350g、ライ麦粉50g、ドライイースト8g、牛乳100ml、砂糖大さじ1/2、塩大さじ1/2、ぬるま湯200ml
作り方:
材料をすべてボウルに入れ、粘つかなくなるまで片手でまとめる。ラップをして倍に膨らむまで1次発酵。
打ち粉をした台で、生地をセルビアサイズの場合は4等分(約180g)、日本人むけには8等分(約90g)に丸める。
平らにしたい場合はフォークで穴をあけ、写真のように膨らませたい場合は、そのまま円形に伸ばす。
オーブンが250℃になるまでラップをして二次発酵。オーブンが温まったら9分焼き上げる。
Proja(プロヤ) / コーンブレッド
"プロヤ"と呼ばれるコーンブレッドは、セルビアの代表的な郷土料理です。チーズ入りのしっかりした塩味で腹持ちが良く、伝統的に羊飼いの朝食として食べられていたそうです。形からは甘いお菓子を想像しますが、お酒にもあうね、と必ず言われる人気者です。
日本では米が育たない地域でそば粉を栽培していたように、セルビアでは小麦の代用としてトウモロコシを育て、コーンブレッドは貧しい人の食べものとされていたそうです。それもいまは昔。現在では特別な友人に配るものと位置づけられ、2018年1月に安倍首相がセルビアを初訪問した際の晩餐会でもメニューに供されたという逸話も。
材料:
小麦粉、コーンフラワー、チーズ、卵、牛乳、植物油、ベーキングパウダー
Pogača(ポガチャ) / 竈(かまど)パン
"ポガチャ"は、トルコ発祥のふんわりとした生地のパン(トルコ語=Poğaça、セルビア語=Pogača)。名前の意味は「丸いパン」。粉と水がメインのレピニャに対し、卵を加えたリッチな配合が特徴です。日常の食卓にはシンプルで大振りな形のパンを焼きますが、クリスマス、イースターや「スラヴァ(守護聖人の祝日)」などの「ハレ」の日には、小麦粉でさまざまな象徴的モチーフの装飾を施されます。結婚式では、一家の繁栄の象徴として花嫁が抱え、参列者が新郎新婦にライスシャワーならぬ塩のシャワーをふりまきます。
材料:
小麦粉、牛乳、植物油、ヨーグルト、卵、イースト、塩、砂糖
Slavski kolač(スラヴスキ・コラチ) / 守護聖人の日の祝いパン
セルビアでは各街や家庭やごとに父系で受け継がれる守護聖人を持ち、正教徒はその記念日を祝います。ユネスコ無形文化遺産にも登録され、12月19日の聖二コラウス、5月6日の聖ゲオルギオス、1月20日の洗礼者ヨハネ、1月27日の聖サヴァなどが多く祝われているそうです。
教会での儀式のために焼かれる”スラヴスキ・コラチ”はキセルビア語でスラヴァケーキを意味し、神にささげる犠牲の象徴です。キリストのシンボルである十字と聖人に関係のあるシンボル(ハトやバラ、本など)を飾るのが常です。食卓には聖人のイコン、スラヴスキコラチが並び、主の象徴であるロウソクの灯りがコリヴォまたはジト(žito)と呼ばれる小麦のペーストに立てられます。どことなく日本のお盆に通じるものを感じませんか?わたしは日本人で守護聖人を持たないため、セルビアの修道院で記念にいただいたイコンを飾ります。
材料:
小麦粉、牛乳、植物油、ヨーグルト、卵、イースト、塩、砂糖、ゼラチン
Božićna Česnica(ボヅィツィナ・チェスニッツア) / クリスマスのパン
セルビア正教会では、ローマ皇帝カエサルにより紀元前45年に定められたユリウス暦に則り祝日を祝います。1年のはじまりはグレゴリオ暦より2週間遅れの1月14日。クリスマスはセルビア語でBožić(ボジッチ)といい、1月7日がその日にあたります。前日の6日は祝いの準備が行われ、この日まで肉、卵、乳製品が禁じられた禊の期間です。クリスマス当日には豚の丸焼きなどのご馳走を用意し、早朝の夜明け前に特別に焼いたČesnica(チェスニッツア)というパンに、教会で祝福を受けます。
チェスニッツァは、クリスマスの重要な象徴のひとつであり、「共有」を意味する古い単語「čest」にちなんでその名前が付けられました。地域ごとに異なるレシピがあり、幸福と健康のさまざまなシンボルや、キリストのモノグラムで飾られています。帰宅後、テーブルを囲んだ家族や親族でチェスニッツァに手を差し伸べてつかみ、三周回したのち一斉に引きちぎって中に焼き込んだコインを誰が引き当てるかで一年の幸運を占います。
材料:
小麦粉、牛乳、卵、オリーブオイル、イースト、砂糖、塩
Pogacice(ポガチッツェ) / スコーン
セルビアのスコーンは、強力粉とバター、牛乳などでつくります。イーストで軽く発酵させてかりっと焼き上げ、ヨーグルトやクロテッドクリームとあわせるそうです。
材料:
小麦粉、牛乳、クロテッドクリームまたはチーズ、バター、卵、イースト、砂糖、塩、ゴマ
Kiflice(キフリツェ) / プチロール
キフリツェというセルビアのひと口サイズのパン。ミニクロワッサンとよく似た見た目とサイズですが、ヨーグルト、サワークリーム、植物油でさっくりとした食感。セルビアンナイトでは、黒ゴマはベーコン入り、白ごまはカッテージチーズ入りが定番。小さいけれど食べごたえのあるスナックです。
材料:
小麦粉、牛乳、植物油、ヨーグルト、サワークリーム、イースト、卵、バター、砂糖、塩、ベーキングパウダー、ゴマ、具はチーズやベーコンなど