food&wine/料理とお酒
Bagrina(バグリーナ)《中央ヨーロッパの土着品種》
セルビア、ブルガリア、ルーマニアで栽培された非常に古いバルカン品種。ネゴティン渓谷のいくつかの古い畑の砂地の斜面で忘れられかけていたが、近年の土着品種の見直しにより再発見された。
【主な産地】
Crna Tamjanika(ツルナ・タミヤニカ)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=クラィンスク・タミヤニカ(Krajinsk Tamjanika)=ムスカット・ルザ(Muskat Ruza)=ムスカット・デ・ロゼ・ノワール(MUSCAT DES ROSES NOIR)
黒いマスカット種は世界的にも珍しく、ネゴティン地区の、わずか50haほどで栽培されている稀少な品種である。中世にこの地域で栽培されたという記録が残っているが、南フランスから19世紀のはじめにセルビア西部のネゴティン渓谷に導入されたという説もある。ほんど消滅しかけていたが、近年の土着品種のみなおしで農地が回復された。
非常に高い糖度を持ち、ワインには残糖分が残る。バラ、チェリーの豊かな香りと、特徴的なナツメグの香りが豊かな、なめらかで強い味わいの、やや甘口のワインを生み出す。すぐれた品質の赤ワインで、過去にはティトー大統領のお気に入りであったという伝説をもつ。
【主な産地】
Fetească Neagră(フェテアスカ・ネアグラ)《中央ヨーロッパの土着品種》
ルーマニアの古い植物相変種-モルドバのブドウであり、「黒い乙女」という意味の名前を持つ。ボルドー・タイプのブレンドに使われることが多く、12〜14%のアルコール含有量、濃い赤色、ルビーの色合い、熟成に伴ってより豊かで滑らかになる黒スグリの風味を持つ、ドライ、セミドライ、または甘いワインを生み出す。
【主な産地】
バナト地方
Furmint(フルミント)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=モスラヴァッツ(Moslavac)=シポン(Shipon)
中欧および東ヨーロッパで主に生産されている。ハンガリーのトカイに使用される品種として有名である。豊かな香りと高いアルコール度数が特徴で熟成に適している。
Kadarka(カダルカ)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=スカダルカ(Skadarka)=ブラニチェフカ(Braničevka)=チェテレシュカ(Četereška)
17世紀後半にセルビアの総主教アルセニエ3世(Arsenije III Čarnojević)によってルーマニアとハンガリーの国境地帯にもたらされた。19世紀にはムラヴァ地方で広く栽培されていたが、第二次世界大戦後、国際品種の出現によりカダルカの栽培面積は激減した。
ワインは非常に飲みやすく、調和が取れており、チェリーのマイルドな味わいを思わせる芳香をもつ。果実味が豊かで、芳香を持ち、その洗練された風味が高く評価されている。乾いた良い年にはタンニンが濃く、どっしりとした赤ワインが作られるが、悪い年には果実が傷みやすく、白ワインに加工される。
【主な産地】
Kosmopolita(コスモポリタ)《セルビアの交配品種》
Cserszegi füszeres × Kristaly の交配種。
ハンガリーとセルビアの共同研究で作成された。果実は丸いピンク色で、皮は厚い。収穫期は8月中旬。繊細なナツメグの香りを持つ上質な白ワイン。
【主な産地】
バチカ地方
Mézes Fehér(メーゼス・ヘーフェル)《中央ヨーロッパの土着品種》
かつて中央ヨーロッパで広く普及し、主に混合栽培で栽培されていた。メーゼス(Mézes=ハンガリー語で「蜂蜜」)という名前は、ブドウの糖度の高さに由来していると考えられるが、ハンガリーでは現在はほとんど栽培されていない。たいへん甘い白ブドウで、オレンジワインもつくられている。
Muskat Krokan(ムスカット・クロカン)《中央ヨーロッパの土着品種》
この品種によるデザートワインのベルメット(Bermet)には、20種類以上のハーブとスパイスを加えられ、独特の芳醇さと濃い黄金色が出ることで知られる。
ムスカットクロカンは、スレムスキ・カルロヴツィ(Sremski Karlovci)の地域の伯爵であり領主であるリポット・ロホンチ(Lipot Rohonczy)によりフランスから紹介された(一説によると、アルジェリア賭けに買って新芽を受け取ったとも言われている)。いくつかの場所に植えられたが、ビセルノ・オストロヴォ(Biserno Ostrvo「真珠島」という意味)と呼ばれている区画でのみ根づいたといわれている。地所の一部に、現在も存在する小さな城とワインセラーを建て、息子のギデオン・ロホンチ(Gedeon Rohonczy)はブドウ栽培とワインの生産を続けた。当初は自家用と特別な贈り物に限定されていたが、後にマスカットクロカンの名前で販売したワインはブダペスト、ロンドン、その他のヨーロッパ市場で販売され人気を博した。第二次世界大戦後、この財産はロホンチの相続人から没収され、「ソコラック」がブドウ畑を継承し、政治家に愛された。
【主な産地】
スレムスキ・カルロヴツィ(Sremski Karlovci)の「ビセルノ・オストロヴォ(Biserno ostrvo)区画」のみ
Otelo(オテロ)《中央ヨーロッパの土着品種》
テーブルワインやジュース、ワインの生産に使用される白ブドウ品種。カビ、黒腐病、およびフィロキセラに耐性を示し、台木としても使用される。
皮がむけやすく運搬に適さないため、小規模な生産者が限られた地域でのみの販売を行っている。
Petra(ペトラ)《セルビアの交配品種》
クンバラ(Kunbarat)×ピノ・ノワールの交配種。冬の低気温への耐性を導入することを目的として1991年に承認された。
糖度が高く、非常にはっきりとした上質なマスカットの香りを持つ。収穫期は9月中旬。ワインは高品質で調和のとれた味わいの、やや甘口の白。
Plovdina(プロヴディナ)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=リシチーナ(Lisicina)=スランカメンカ(Slankamenka)
バルカン半島全体(マケドニア、アルバニア、トルコ、ルーマニア、ギリシャ、ブルガリアで見られる古代のバルカン品種である。ブルガリアではパミッド(Pamid)とも呼ばれている。セルビアでは、レッドスランカメンカとも呼ばれ、フルシュカ・ゴーラの有名な場所、スランカメンカに由来している。「大きな狐」(リシチーナ)という別名も持つ。収穫期は9月中旬。アルコール度数と酸味が低いため他の品種ブレンドされることが多い。ロゼや赤ワインに用にプロクパッツと同じ畑で植えられていた歴史がある。
【主な産地】
Portugizer(ポルトゥギーザー)《中央ヨーロッパの土着品種》
【別名】
=ポルトゥギザック(Portugizac)=ブラウ・ポルトギーザー(Blauer Portugieser)
かつては、オーストリアの大使であった男爵フォンフリースが18世紀にポルトガルから中央ヨーロッパの地域にもたらしたと考えられていた。DNAの研究により、中央ヨーロッパに由来し、かつてオーストリア・ハンガリー帝国全体で一般的であったという説が有力である。ヴォイヴォディナ地域では、20世紀初頭に最も多く見られた黒の品種の1つ。果実は中粒で、丸みを帯びた濃い青。包皮は薄い。収穫時期は9月初旬。
ワインは、淡色のライトボディのワインを生産することで定評がある。収穫時期が早いため、その年の初飲み用の、香りのよい酸味と果実味が豊かでやわらかなワインが作られる。セルビアでは伝統的に「スヴァトヴァック(svatovac)」と呼ばれ、若い消費者向けである(スヴァット(svat)は結婚式の参列者という意味。結婚式やごちそうの季節が始まる秋に消費されるため)。
【主な産地】
スレム地方
Prokupac(プロクパッツ)《セルビアの土着品種》
【別名】=プロクプリェ(Prokuplje)=カメニチャンカ( Kameničanka)
南部のプロクプリェ(Prokuplje)原産。中世ネマニッチ王国がオスマン帝国に敗れた後も、ジュパ(Župa)に置かれていたラザール公(Lazar)のクルシェヴィツァ(Krševica)の畑で受け継がれ、「教区の王」と称されている。全盛期にはセルビア全土で栽培が行われていたが。絶滅の危機に瀕した当時は、ほとんどがジュパにあり、わずかにスメデレヴォに残されていた。近年はプロクプリェのトプリツァ(Toplica)地区での生産が盛んで、北部のヴォイヴォディナや南部にも広がりをみせている。シラー(Syrah)の別名であるとの意見もみられるが、DNA解析はまだ行われていない。
ワインは淡い色中程度のガーネット色。ブラックチェリーやレッドチェリー、ブラックベリー、プラム、スパイス、ペッパー、タバコ、または森の土の香りが含まれる。また、ハイビスカスの花の香りがすることもある。濃色のロゼが主流であったが、近年は単一品種での赤ワインの生産や、ボルドー・タイプなどの国際品種とのブレンドなど、熟成による効果など、品種の可能性をさぐる動きがみられる。
【主な産地】
ポツェリナ・ヴァリェヴォ地方、クニャジェヴァッツ地方、ネゴティン渓谷、シュマディヤ地方、トプリカ川流域地方、トリモラヴェ地方、ベオグラード地方、ムラヴァ川流域地方、ニーシュ地方、ニシャヴァ川流域地方、レスコヴァツ地方、チャチャク・クラリェヴォ地方、コソヴォ地域