food&wine/料理とお酒

【Gastronomija Srbije / セルビアの食文化】

セルビアのカイマック(kajmak)について

カイマック(kajmak)は牛乳(または水牛、羊、山羊の乳)の分離したクリームの膜からつくられた、天使のような悪魔のような発酵クリーム。セルビア語で「カイマックをさらう」といえば、「美味しいところだけ取る」という意味だそう。

「イギリスのクロテッドクリームに似ているけれど、その100倍美味しい」と評する友人も。脂肪分が高く、通常は約60%ほど。濃厚でクリーミー。豊かな味わいを持つ。

語源は中央アジアのテュルク語に由来。中央アジアからバルカン諸国にかけ、コーカサス、トルコ、中東地域などで食されている。セルビアでは大量生産品も市販されているが、上質なものは自家製である。主な名産地は、クラリェボ(​​Kraljevo)、ウジツェ(Užice)など。クラリェボ(​​Kraljevo)、最高品質のカイマックを求める人々が毎週金曜日のマーケットに集まる。

2015年に参加した牧場でのワークショップでは、放牧ジャージー牛の初乳が使われた。フレッシュ・カイマックも、数日間熟成させたカイマックも、どちらも絶品の忘れられない味。以下は、ワークショップで撮影した写真でたどる、カイマックの製造方法。

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訪れたのは、ベオグラードから車で4時間ほど南下したゴリア山地にある農園。一帯は2001年に生物圏自然保護地域として登録されており、緯度は青森県と同程度。標高は最も高いJankov Kamen山が 1,833m。見渡す限の広大な農園で、遠くに見える点が放牧している牛たち。鶏舎も平飼い。養蜂の巣箱も。

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出迎えてくれたのは名人のMica(ミカ)さん。お宅を訪問すると何はともあれまず「お茶っ子」でよもやま話がはじまるのは、日本の田舎と同じ。豊かな農村風景は黄金色に揺れるトウモロコシを稲穂に、積まれた麦藁をはざ掛けに置き換えれば遠野や花巻と重なり、岩手の農園でこちらの写真を見せても「このへんの写真じゃないの?」とデジャヴを感じた返答を受けたのは余談。

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お待ちかねのKajmak(カイマック)づくり体験。原材料は出産したばかりの母牛の初乳と塩のみ。日中は放牧している牛たちが日没後に牛舎に戻り、仔牛のお腹がいっぱいになると人間の番。ミカさんが翌日の分を搾乳。

50ℓの牛乳で800gのカイマックができる。絞った牛乳をひと晩置き、脂肪分が分離して浮かんでくるまでそのままにしておく。

2015-09-22 171.jpg2015-09-22 172.jpgカイマック(kamak)について

分離した牛乳がはいった鍋を火にかけ、脂肪分が湯葉のような膜になるまで加熱する。膜がはったら火を止めて冷ます。牛乳が覚めたらナイフで丁寧に鍋肌から膜をはがし、そっとまとめて

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脂肪膜を抑えて下の液体を別の容器に移す。(脂肪膜をすくいとった後の牛乳には、別途レンネットを加えてチーズをつくる。)

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とりわけた脂肪膜を密封容器に移し、塩をふって3-4日冷蔵庫で熟成させる。 

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こちらは既に2-3日発酵させてあるフレッシュカイマックの試食。アイスクリームのように、ころころと盛り付け。

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肉やケーキ、食卓のあらゆるものとカイマックの組み合わせを試し、個人的には、パンと蜂蜜、カイマックのコンビネーションがツボ。(セルビア人には邪道だと言われますが・笑)