food&wine/料理とお酒
セルビアワインの産地と特徴
セルビアでは、地理的な位置と気象条件により、国のほぼすべての地域でブドウ栽培が可能である。ワイン産地は1970年代に9つの地域と、それぞれいくつかの地区に分類されていた。2013年の原産地呼称の制定と産地の再分類により、22の地方(Rejonizacija)が定義され、2015年の改正により中央セルビア、ヴォイヴォディナ、コソヴォの3つの地域と、75地区に細分された。
※産地名は、それぞれの地域の特徴と主な栽培品種、原産地呼称、郷土料理についての説明ページにリンクしています。
1.中央セルビア(Centralna Srbija)地域
コスマイ(Kosmaj)山、ルドニク(Rudnik)山、ヴェナチャク(Venačac)山のふもとの丘の上に広がるベオグラードでは、ドナウ川とサヴァ川の合流地点にある。中央セルビア地域は13地方の57地区でブドウが栽培されている。ルーマニアの国境近くには、ヨーロッパ最大・最長のジェルダップ(Đerdap)峡谷がある。ドナウ川が南カルパチアの山あいをえぐってできた峡谷で、支流のモラヴァ沿岸の斜面ではブドウ栽培がさかんである。最も有名な産地は、ルーマニア、ブルガリア、セルビア三国の国境に近い東部のネゴティン渓谷(Negotin)地域である。ドナウ川南岸に位置するベオグラードの砂質土壌は、スメデレフカ種の栽培に最適であり、スメデレフカ・ワインの最大産地となっている。西モラヴァ川流域地方のオブチャル山とカブラル山の渓谷には、オブチャル・カブラル修道院郡があり、オスマン帝国支配の時代を通してワイン製造の伝統が守られてきた。南部には、プロコップ(Prokop)とトポラ(Topola)があり、人びとは古くから土着品種の栽培はじめていた。カラジョルジェヴィッチ王家のブドウ園も、トポラのオプレナッツ(Oplenac)で続いている。
①ポツェリナ・ヴァリェヴォ地方(POCERSKO-VALJEVSKI REJON)
②ネゴティン渓谷地方(REJON NEGOTINSKA KRAJINA)
③クニャジェヴァッツ地方(KNJAŽEVAČKI REJON)
⑩チャチャク・クラリェヴォ地方(ČAČANSKO – KRALJEVAČKI REJON)
2.ヴォイヴォディナ(Vojvodina)地域
サヴァ川とドナウ川の北に位置するヴォイヴォディナ地域に広がるパンノニア平原は、古くは海底であった。ヨーロッパでもまれな肥沃な砂原が広がり、スボティツァ(Subotica)地方の肥沃な土壌はブドウの栽培に最適である。北部では豊かな酸味の最高品質の白と軽やかな赤、南部では芳醇な香りの白とフルボディの赤ワイン作られている。7つの地域の17地区でブドウ栽培が行われている。現在、ヴォイヴォディナ自治州スレム郡の行政的な中心都市であるスレムスカ・ミトロヴィツァ(Sremska Mitrovica)は、紀元3世紀にはローマ帝国の4つの首都の1つであった。フルシュカ・ゴーラ国立公園の全長80kmに及ぶ丘陵の斜面では、ローマ時代からブドウ栽培が盛んでワインの産地として有名である。
⑲ユジュニバナト地方(JUŽNOBANATSKI REJON)
コソヴォのワイン産業は2つの法律に準拠している。すなわち2つのワイン地域(北メトヒジャと南メトヒジャ)を定義するセルビアのワイン法と、地元のアルバニア人が採用し、2つのワイン地域(ドゥカジニ地域とコソヴォ)を定義するコソヴォワイン法である。南セルビアのワイン生産は、中世ネマンチッチ王家の時代にコソヴォとメトヒヤから始まった。南部に位置するコソヴォ地域は、山地の多い大陸性の気候を有し、中世からはじまるブドウづくりが修道院で続けられている。この地方は、中欧と南欧、アドリア海と黒海をむすぶ地点に位置し、山地の多い大陸性の気候である。UNESCO世界文化遺産に登録されている正教会の修道院が、デチャニ、グラチャニツァ、ベーチ、プリズレンの各地にあり、修道院のぶどう畑でつくられる葡萄酒は、コソボ・メトヒヤ・ワインとして、とくに人気を博している。北メトヒヤ最大のワイン生産地域はイストク(Istok)、南メトヒヤ最大のワイン生産地域はオラホヴァツ(Orahovac)である。
㉑北メトヒヤ地方(SEVERNOMETOHIJSKI REJON)
㉒南メトヒヤ地方(JUŽNOMETOHIJSKI REJON)