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セルビア(ラシュカ、修道院にて「アガペシロップ」づくり)

2015-09-24 (木)

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 キリスト教でパンはイエス・キリストの肉、ワインは血。今回のクッキングツアー最後のワークショップは、ラシュカ近郊の修道院での「アガペシロップ」作りでした。

 数日前に訪れたストゥデニッツァ(Studenica)修道院は、世界遺産ということもあり観光客への対応も備え、年間最大の祝祭日で賑やかでした。今回は田園地帯にひっそりと佇む女子修道院。バスが門に到着し、ここから先入るにあたり「許可がないかぎり撮影禁止」という指示を受け、一同に緊張が走りました。

 以下、英語での説明だったので不確かな部分もありますがご了承ください。 

 奥が聖遺物のある至聖所。手前中央の台には修道院が祀る聖人の画(イコン)が置かれます。祭壇の最奥にある小部屋(至聖所)には聖人の遺物が収められ、女人禁制。女性修道院においてもその禁は守られているそうです(重要な儀式は他の修道院から訪れた男性の聖職者が執り行う)。女性の地位の低さに哀しさと共感を覚えつつも、美しいフレスコ画に囲まれた内部での撮影許可を得て歓喜。

 

 小部屋との境を仕切る壁(イコノスタス)に描かれたいくつもの画には旧約聖書の創世記が描かれており、珍しいものだそうです。セルビアでこれまでに訪れた礼拝堂はどこも、度重なる征服と戦争の歴史による傷を受けていました。セルビア正教の特徴である金銀を用いた金銀を用いたフレスコ画を、本来あるべき姿ではじめて目にすることができました。創建された12世紀からの、波乱の歴史を感じさせないきめこまやかな美しさが、かえって胸に迫ります。 

 

スラヴ系正教会の十字架は、横棒が3本ある八端十字。

 

 厳粛な雰囲気のなか、入口付近のお土産物のあまりの可愛らしさに釘付けになってしまいました。不謹慎?時間がない?と迷いながらも意を決して「これ・・・買ってもいいですか?」と口に出したところ・・・・快諾。

 

 すべて修道院内での手作りのお土産。「きゃー、かわいい」「私これ」の世界にしばし没頭。どれも素敵で迷いましたが、革ひもに結ばれた赤い十字架を選びました。

 この出来事をきっかけとして空気が和み、ここからは、国籍も年齢も職業の壁も超えた同じ女性としての心のつながりが芽生えたようです。

  

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 礼拝堂を後にテラスに移動し、ワークショップの開始。 

 修道院では、生活のほとんどすべてを自給し、シスターそれぞれが専門的な技能を持ちっています。有機農業や絵画、服飾など専門の教育受けられるため、人生の進路選択のひとつとして、修道院に入るという道があるそうです。

 それまで宗教の道は「跡継ぎに生まれた人」以外が選ぶ認識をあまり持っていませんでした。ドラマチックに「出家」を描き、「尼寺へ行け!」と叫ぶような映画や文学に接しすぎた偏見だったようです。修道院は「職業」や「教育」の場でもあるということでしょう。

 

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試飲ののち、「アガペシロップ」のづくりの作業を見学。

「アガペシロップ」とは、教会の儀式で使用されるワインのこと。それまで、ふつうの赤ワインが使われていると思い込んでいましたが、それも誤りだったようです。

人生は思い込みに満ち溢れている。。。。

  

鍋に蜂蜜を入れて、水で薄めて温めます。

屋外のため、何匹かの蜂が蜂蜜を取り返しにくるのもご愛敬。セルビアの蜂はおとなしく、刺すことがないので、いつもハエのように手で追い払われています。

 

ハーレムローズというトルコ産のバラを乾燥させたものと一緒に

 

 

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スパイスとともにワインに漬けこみます。

10日ほど発酵させて冷暗所に保管ののち、教会の儀式で使用されるそうです。 

 

 

もしよかったら、と見せていただいた。手作りの蜂蜜やシロップ、調味料などなど。 

 

愛らしい包装!蜜蝋で封がなされ、タグも瓶のイラストももちろん手書きです。

みんなの財布の紐がまたまた緩み、包装が済んでいない在庫分を、とり急ぎご用意いただくことに。

別棟のテラスでの昼食。 

写ってはいませんが、甘いワインに誘われた鉢がここにも飛び回っています。

帰国後「日本は蜂が少ないな~」と感じるようになってしまいました。

 

Paradajz salata / トマトサラダ

 

 

Burek / バルカンのうずまきパイ

 

 

 

đuveč / 土鍋焼き 

 

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ワークショップと昼食後、修道院内を見学。

テラスから見た風景は見渡す限りの美しい田園地帯ですが、実際のところはWiFi完備。

テクノロジーも有効活用されています。

 

フレスコ画や儀式衣装の制作の様子も見学させてくださいました。

イコン(宗教画)制作の見学。板にウサギの”ニカワ”を塗って色をつけていくそう。

 

石をすりつぶして絵具を作る様子。日本画と似てるかな。

 

美しい・・・・

教会で販売しているイコンは、この大きさになると日本の神社に喩えた場合「お守り」というよりは「お札」・・・のようなものでしょうか?

 

 いままでお会いした修道僧も修道女も黒衣に身を包んでらっしゃいましたが、ここでは、男性の高位聖職者の祭服も制作されているとのこと。
これは首からマフラーのように下げるもの。

 

真紅も!
ロックミシンで縫製し、デザインはコンピュータに保存。

手仕事とハイテクノロジの共存に、また驚愕!!

 

 

金銀で彩られるリボンやボタン。

ともに過ごす時間が名残惜しく、最後にお茶の時間。

 

 

親日家のシスターが、ご自身の蔵書からセルビア語で書かれた、日本の正教会に関する書籍や「HAGAKURE」セルビア語訳を見せてくださり、びっくりーーーーー!!

「葉隠」って武士道の本だよね。私だって読んだことないよー。

お茶の水のニコライ堂にも行ったことがない。。。。

 

 

 

 宗教観の対立の歴史を持つ国では、仏教と神道が並び立つ日本の在り方にとても感心があるのだそうです。勉強していてよかった神社検定。お互い母国語でない英語でやりとりなので、かなーーーりざっくりですが説明。神道では在人神である天皇家が仏教を認め、戦国時代に禁止されたキリスト教を明治政府が認め、ごちゃまぜだった神道と仏教を整理し、第二次大戦後にどの宗教を信じてもよくなったんだよ、と。

 

 それまでの6日間に、民を守るためにイスラムに改宗した貴族階級の話、1999年のNATO軍空爆の跡などを目にしていたこともあり、この時のシスターたちとの対話で、自分の世界観がアメリカを中心としたものだったのだと気づきました。

 

 うん、まぁ、そして食いしん坊で可愛いもの、きれいなものが好きな女子たちの国境はかなり低い。(セルビア人も「私たち女性は何歳になってもGirlsよ」って女子発言してた。日本だけじゃなかった。

  

そんなこんなで、すっかり打ち解け、最後には写真掲載の許可もいただきました。

関係者のみなさま、ありがとうございました。 

 

追記:

ふり返ってみれば、その後の人生に大きな影響を与えた1日。

この修道院での経験をきちんと理解できるようになるまで帰国後に長い年月を要し、5年後の2020年9月にようやく書き上げました。

料理はもとより、歴史について、言葉について、正教会について、そしてワインについて。

セルビアについての学びが深まるにつれ、どれほど貴重な体験を得たか、そのたびに知ることになました。

 

あたためて、みなさまに感謝を捧げます。